NXP Semiconductors新CEO Sievers氏に聞く:コラボレーションに重点(2/3 ページ)
2020年5月27日、NXP SemiconductorsのCEO(最高経営責任者)に2018年9月からNXP社長を務めてきたKurt Sievers氏が就任した。88億米ドルという売上高を誇る大手半導体メーカーを社長兼CEOとして率いることになったSievers氏に、経営方針や今後の市況見通しなどについてインタビューした。
セーフティ/セキュリティ、エッジコンピューティング
EETJ 産業IoTビジネスの戦略はいかがですか?
Sievers氏 産業IoT領域も、2019年末にMarvellの無線通信事業の買収を完了したことで、非常に素晴らしい品ぞろえが完成した。アプリケーションプロセッサ、マイコンに加えてセキュリティとコネクティビティ、パワーマネジメントという完璧な品ぞろえは、競合他社にない、唯一の強みだと自負している。
産業IoT、エッジコンピューティング分野は今後ますます重要になる市場であり、今後10年にわたり成長を続ける。このエッジコンピューティング分野で、業界随一の品ぞろえを完成させることができたということは、最も成長に近い場所にいるということだと思っている。
EETJ 通信インフラ、モバイル事業については。
Sievers氏 通信インフラ市場は、5G(第5世代移動通信)向け通信基地局の整備が一層加速するが、NXPとしては、そうした5G基地局に対し、RFパワートランジスタを展開していく。このRFパワートランジスタについても、LDMOS、GaN、SiGeの各デバイスをそろえ、Sub6GHzからミリ波までをカバーする完璧なポートフォリオを生かしていく。
モバイルビジネスについては、技術リーダーである決済システム向けのNFC(近距離無線通信)技術、セキュリティ技術を強化していくだけでなく、今後5年はUWB(超広帯域無線)を活用したさまざまな新しいアプリケーション、例えばメカニカルの鍵を置き換えるようなアプリケーションなどが登場する見込みであり、NFCなどと同様に、UWBでも業界を引っ張っていく。
4つのビジネスに共通するのは、セキュリティ/セーフティ(安心/安全)とエッジコンピューティング。しっかりとセキュリティ/セーフティ、エッジコンピューティングへ投資していく。
M&AはAI領域に着目
EETJ 半導体メーカー各社は、AI処理用デバイスの開発を急いでいます。
Sievers氏 エッジコンピューティング領域で成功を遂げるには、低消費電力技術ととともに、AI技術が欠かせない重要な要素になると考えている。
NXPとしては、社内で独自にAI関連技術開発を実施している。それと同時に、社外パートナーとのコラボレーションにも注力している。1つの例が、フランスの新興企業であるKalrayとの共同開発がある。KalrayはAI処理に向く超並列プロセッサ技術などを有している。もともと、Kalrayは、車載向け以外の用途に向けて開発を行っていたが、NXPとのコラボレーションにより車載用途へと応用が広がった。
EETJ 今後のM&A方針を教えてください。
Sievers氏 繰り返しになるが、Marvellの無線通信用半導体事業の買収で品ぞろえは完成した。そのため、規模の大きなM&Aはもう必要がなくなり、M&Aについては規模の小さなものになっていくだろう。
公にはできないが、いろいろな検討を行っている。先ほどのKalrayにも出資しているように、コアエレメントになるであろうAI技術を持つさまざまな小規模企業、スタートアップに食指を動かしている。
自動車、産業向けコネクティビティで圧倒的シェアを
EETJ Marvellの無線通信用半導体事業の買収から約半年が経過しました。NXPでは、トップシェアの領域にフォーカスするという方針であり、買収したコネクティビティ製品については、これからシェアを高め、トップシェアを狙うという状況にあります。今後、どのようにしてシェアを高める方針ですか。
Sievers氏 われわれは、単にトップシェアを目指すだけでなく、シェア2番手の1.5〜2倍のシェアを持つ圧倒的な強いトップを目指している。コネクティビティ製品についても強いトップを目指すが、コネクティビティ全体でのシェア首位を目指すわけではない。われわれが目指すのは、自動車、産業分野でのエッジコンピューティング向けコネクティビティ製品領域での、1位だ。
昨年(2019年)、われわれのアプリケーションプロセッサが採用されたデザインのうち、約3分の2で、アプリケーションプロセッサの隣にコネクティビティデバイスが存在した。ただ、これまでは、われわれにコネクティビティデバイスがなかったので、当然ながら他社製品が採用された。しかし、コネクティビティデバイスを手に入れた現在では、アプリケーションプロセッサとともにすぐに使えるソリューションを提供できるようになった。こうした完璧なソリューションを整え、提供することで自動車、産業分野でのシェアを獲得していく。
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