SiCは自動車、GaNはスマホが普及をけん引:次世代パワー半導体(2/2 ページ)
パワーエレクトロニクスでは、GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)などのワイドバンドギャップ(WBG)デバイスの採用が進んでいる。シリコンは依然として市場を独占しているが、GaNやSiCデバイスの登場によって、技術はより効率的な新しいソリューションに向かうと予想される。
GaN市場でのM&Aが活発に
EE Times:SiCとGaNは、今後どのような技術的発展を遂げていくのか。
Dogmus氏:技術に関しては、SiCパワー半導体業界は現在、大口径SiCウエハーの品質向上と、パワーモジュール開発の実現に向けて注力しているところだ。GaN分野における主要動向としては、SiP(System in Package)またはSoC(System on Chip)のいずれかのソリューションにおけるGaNデバイスの統合が挙げられる。
EE Times:フルSiC、フルGaNモジュールの現在の開発状況はどうか。
Dogmus氏:フルSiCモジュールに関しては、重要な開発が進められており、特にダイアタッチ(die-attach)や基板インターコネクトなどのパッケージング材料や技術が重要視されている。メーカー各社は、高信頼性、高性能のパワーモジュールの実現に向け、引き続きフルSiCモジュールの開発に取り組んでいる。GaNについても、今後数年のうちに、自動車用途向けとして新しいGaNモジュールが開発される見込みだ。
われわれとしては、SiCやGaNなどのWBGパワーデバイスは、大きなマイルストーンを達成したと理解している。デザインウィンを獲得している他、自動車や、スマートフォン向け急速充電器などの新興市場において、既に普及し始めている。これまでシリコンパワーデバイスを手掛けてきた大手メーカーのほとんどが、GaNまたはSiCのいずれかのパワー半導体市場に参入している。WBGを選択したプレイヤー企業を後押ししている要素としては、デバイスやシステムの高性能化や、高効率化、フォームファクタの小型化、システムコストの削減などが挙げられる。
EE Times:投資マップとしては、どのような分野にどれくらいの金額が投じられているのか。
Dogmus氏:成長著しいSiCパワー半導体市場では最近、ウエハー側に重点が置かれている。例えば、STMicroelectronicsは2019年、SiCウエハーメーカーであるNorstelを1億3750万米ドルで買収した。Creeも同時期に、SiCウエハーの製造に10億米ドルを投じ、完全な車載用SiC製品向けの8インチ製造設備の生産能力を活用していくと発表した。さらに、韓国のSK Siltronはつい最近、DuPontのSiCウエハー部門を4億5000万米ドルで買収し、手続きを完了させた。SiCメーカーにとって、ウエハー供給を確保することが最大の関心事であることは明らかだ。
一方、パワーGaNは最近、新興市場での普及が進んでいる。今まさに投資が開始されたところで、今後数年間は継続するとみられる。例えばSTMicroelectronicsは2020年3月、GaNを手掛けるフランスExaganを買収すると発表した。
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