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量子ビットを初期化する 〜さあ、0猫と1猫を動かそう踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(3)量子コンピュータ(3)(5/8 ページ)

今回のテーマはとにかく難しく、調査と勉強に明け暮れ、不眠に悩み、ついにはブロッホ球が夢に出てくるというありさまです。ですが、とにかく、量子コンピュータの計算を理解するための1歩を踏み出してみましょう。まずは、どんな計算をするにも避けて通れない、「量子ビットの初期化」を見ていきましょう。

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「虚数」について、猫で考えてみる

 まず、量子ビットとは、1匹の”猫”です。ただし、この”猫”は、”0猫”も”1猫”の2匹の猫が重ね合わさっていて、同時に確率的に別々の場所に存在しています。50%:50%で存在している場合もあれば、70%:30%の比率で存在している場合もあります。この50%とか70%とか30%が、猫の「大きさ」です。

 次に「タイミング」ですが、これは、”0猫”と”1猫”が、どのようにドタバタ ―― といっても規則正しく、バネが振動するように動いていますが ―― 両方の猫が完全に同じように、「アイドルデュオの振り付け」のように、あるいは「デュエットのアーティスティック(シンクロナイズド)スイミング」のように動いている時、この時、「位相差0」と言います。

 これに対して、"0猫"と"1猫"が、鏡に映ったように対称に動いている時、これを、2匹の位相が”マイナス1”、または位相差180度と言います。これを”1猫”で表現したものが以下の図になります。

 下の”1猫”は、上の”1猫”と全く逆方向に動いています。

 では、位相差0度と位相差180度の真ん中の状態、つまり、その真ん中状態だけズレている状態は、どのように表現できるかというと、これを、2匹の位相が”i”、または位相差90度になっている、と言います。

 ここで、さらに、位相差90度を与えたいとすればどうすれば良いか? 簡単です。もう一度”i”をかけ算すれば良いのです。i x i =-1となり、180度の回転になっています。つまり、"i"をかけ算するということは、0度と180度の真ん中の状態にする、という意味です。

 ”虚数”とは、"+(プラス)"と"−(マイナス)"のど真ん中の状態を示す、"i"という、偉大なる第三の符号です。これを”虚しい数、虚数”などと翻訳した日本人 ―― 出てきやがれ。

 “虚数”以前に、”マイナス”が発見されたのが6世紀くらいで、経済に最初に導入されたのが11世紀のイタリアという説があります。”マイナス”を使えない世界での商売は散々だったそうです。赤字という概念がなかったので、利益でなくなった段階で、即、倒産、となっていたとか(ただし、この話、ウラが取れていません)。

 “マイナス”もちょっと前までは、”虚数”と同じ扱いを受けていた訳ですから、あと1000年くらいすれば、”虚数”も日常生活で普通に使われるようになるかもしれません。

 なるほど、iが90度回転であることは分かった ―― ならば、任意の角度の回転、23.4度とか、127.2度の回転はどうなるのか、というと、実はここまでの話は全てcos(回転角度)+ i sin(回転角度)という式で一般化できるのです。これがオイラーの公式(eiθ=cos(θ) + i sin(θ))です。

 実際に“cos(180度)+ i sin(180度) = −1” ですし、 "cos(90度)+ i sin(90度) = i" になっています。

 三角関数不要とかほざいていやがる日本人 ―― 出てきやがれ。


 さて、私がデタラメな説明をしていないことを以下の図で証明します。実際の複素数を使って、これがちゃんと回転後の座標に移動しているのが分かると思います。

 「マイナスかけるマイナスが、どうしてプラスになるの?」という小学生の子どもには、「180度回転して、さらに180度回転して、一周して戻ってくるからだよ」と言えば足りますし、「二回かけ算して負数になる数ってどういうこと?」という高校生の子どもには、「負数の180度回転に対して、その半分の90度回転するってことだよ」と言えば足ります。

 ネットを見ると、虚数解とは「解がないこと」てなことが平気で書かれていますがバカ言ってんじゃねーよ

 虚数軸上に(あーー、虚数軸を説明するのに、”虚数”という言葉を使わなければならないことにイライラするーー)、ちゃんと解があります。負数の概念がなかったころには、負のX軸も負のY軸もなかったように、たまたま現在の数学では、虚数軸を現わしていないだけのことです(参考1参考2)。

 それにしても、本当に、この”虚数”という言葉、なんとかならんかなぁ! ―― と思っています。

 虚数は、”虚しい数”ではなく現実世界に普通に存在している数です。虚数を”虚数”と言い続けている限り、量子コンピュータを理解する人が全然増えないこない気がするのです(この『"虚数"を「虚数」以外の言葉で表現したい』について、あなたのアイデアをお聞かせください[※たった1問だけのアンケートです])

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