登場し始めた安価な5Gスマホ、基板は“1層+分離”がメインに:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(45)(2/3 ページ)
2020年は、ハイエンド機種だけでなく普及価格帯のスマートフォンも5G機能が搭載されるようになっている。5G対応を安価に実現できた鍵は、“1層+分離”のメイン基板にある。
出そろった5Gチップセット
図3は、同時期に発売されたReno3シリーズの上位機種「OPPO Reno3 Pro 5G」である。Proのネーミングを持つが機能などは前述のReno3 5Gとほとんど変わらない(搭載されるDRAMサイズが異なる)。
内部は米Qualcommの新プラットフォーム「Snapdragon 765」が採用されている。Snapdragon 765も7nmプロセスで製造され、CPU、GPU、AIアクセラレーターに5Gベースバンドを統合した1チッププロセッサとなっている。
こちらも基板は多くのシールド島で分離されており、図3のサイドが8島、裏面が4島の計12島分離となっており、1層基板だ。Reno3 5Gと Reno3 Pro 5Gは基板構造、構成的にもほぼ同等のものとなっている。Qualcommのチップセット比率はRENO3のMediaTekよりも若干高い41.9%となっている。Qualcommのパワーアンプが採用されていることで、比率が少し高くなっている。メモリやセンサーはさまざまなメーカーのチップを組み合わせている。
5Gベースバンド機能を統合したアプリケーションプロセッサにおいて、MediaTek製、Qualcomm製が出そろったわけだ。
2階建て基板が1層化され、さらに2チップ構成であった5G+アプリケーションのプロセッサが統合されることで大幅に部品点数が削減され、その結果として安価な普及レンジの5Gスマートフォンが続々とリリースされているのである。
MediaTekはDimensityのラインアップを強化し、「Dimensity 1000L」「Dimensity 820」などを発表している。弊社はこれらのチップを網羅的に入手し、解析を進めているところである。
2019年から2020年にかけて、韓国Samsung Electronics(以下、Samsung)も従来は自社製品向けであった「Exynos」プラットフォームを5G向けに外販し始めている。図4は、Samsungの5Gチップセットを用いた中国Vivoのスマートフォン「vivo X30 5G」の外観とメイン基板である。こちらも1層基板構造だ。
図5のように、内部はSamsungの「Exynos 980」プラットフォームが36.4%を占めている。Samsungのチップの特徴はメモリも自社製という点だが、パワーアンプやセンサーなどは他メーカーのものと組み合わされている。ただし、カメラ用CMOSイメージセンサーなども徐々にSamsung製が増えているので、センサー分野でのSamsung比率は高まる傾向にある。Qualcomm、MediaTekらのようにプラットフォームを販売する専業メーカーにSamsungが加わったことになる。
Exynos 980も最新のCPU、GPU、AIアクセラレーターおよび5Gベースバンドを1チップに統合したSoCだが、製造には8nmプロセスが採用されている。
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