登場し始めた安価な5Gスマホ、基板は“1層+分離”がメインに:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(45)(3/3 ページ)
2020年は、ハイエンド機種だけでなく普及価格帯のスマートフォンも5G機能が搭載されるようになっている。5G対応を安価に実現できた鍵は、“1層+分離”のメイン基板にある。
5Gチップセットを比較してみる
表1は、今回報告した3機種に採用されているチップセットを比較したものである。いずれのメーカーも、1チップに統合されたプロセッサと5G通信用のトランシーバーをセット化している。通信用パワーアンプまでセット化しているのはQualcommのみ。SamsungのExynos 980には米Qorvo、MediaTekのDimensity 1000には米Skyworksの5Gパワーアンプが各々組み合わされている。
プロセッサのパッケージにも違いがある。Qualcomm、SamsungはDRAMとNAND型フラッシュメモリが1パッケージ化されたMCM(Multi Chip Memory)に接続されるが、MediaTekはプロセッサのパッケージ上にDRAMが接続されるPOP(Package On Package)+外部NANDフラッシュという構成だ。前者が安価で後者は性能が高いという特長があるが、普及モデルではMCMの採用が多いので、今後普及価格帯の5GスマートフォンではMCMが主流になっていくものと思われる。
表2は今回報告の各プロセッサを開封したチップ写真である。チップ内部はCPU、GPU、AIアクセラレーターと5Gベースバンドやカメラ、ビデオ、ディスプレイ部などで構成されている。
チップ写真上の数字は各チップの面積を表したもの。Samsungのチップは8nmプロセスで製造されているので若干面積は大きい。最も小さいのはQualcommのチップだ。これらの数字はコストに密接に関わる(詳細説明は省略)。同じような機能を持ち、同じような製造技術を使っても、大きな面積差が存在する。半導体の世界では依然としてメーカー間、あるいは方式の間に大きな差があることが、普及価格帯の5Gスマートフォン解析からもはっきりと見て取れる。常にブラックボックス化せず、きちんと開封して「本当の姿」を見て判断することが重要だとますます実感する(弊社では法人、個人問わず常時、他調査会社よりも激安でチップ開封を承っています)。
表3に、2020年に日本国内でキャリアから販売される5Gスマートフォンの機種、内部プラットフォームをまとめた。10機種のうち5機種は中国メーカーのスマートフォンだ。プラットフォームについては10機種全てがQualcommとなっている。
5Gの本格的な普及はこれからだが、5Gスマートフォンに採用されているプラットフォームは今後、自動車やIoT(モノのインターネット)の分野にも応用されていくと考えられる。弊社は引き続き、新しいプラットフォームを解析していく。
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