「TSMCに追い付くには10年」、SMICの今:米中摩擦でチャンスをつかむ?(2/3 ページ)
SMICは、14nmチップの生産を開始し、FinFETを製造できる半導体メーカー/ファウンドリーの“仲間入り”を果たした。同社は間もなく、事業への投資を継続するため、70億米ドル超を得られる株式公開を行う予定である。だが、トランプ政権によって、SMICは最新の製造機器の一部を利用できなくなっている。そうした状況の中、同社はSoC(System on Chip)のトップメーカーが求めるような最先端のプロセス技術を長期的に提供し続けられるのだろうか?
SMICの工場
SMICは現在、全部で7つの工場を稼働させており、うち3つが200mmウエハー工場で、4つが300mmウエハー工場だ。同社は2016年に、イタリアのLFoundryの70%の株式を取得して、車載用半導体市場に参入した。しかし、2019年にこの工場を売却しており、その理由については明かしていない。ただ、SMICのビジネスモデルを見れば、同社が運営する工場施設の株式を売却するのは、決して今回が初めてというわけではないことが分かる。
SMICは設立当初、200mm工場を建設し、実績ある技術に注力していた。同社は2001年に、上海当局からのサポートを受けて初めての工場を完成させているが、これは創立からわずか13カ月後という非常に速いペースだった。そして2008年には、中国初となるロジック向けの300mm工場の建設に着手している。こうしたことから、同社が当時、いかに急速に前進していたかが分かるだろう。
SMICは現在、200mm工場において、成熟したロジックノードや専用プロセス技術を使用し、半導体チップを製造している。同社は、ミックスドシグナル/RFや、MEMS、PMIC、eNVMなどに向けて、実にさまざまな種類の専用ノードを保有している。これらの技術はいずれも、かなり需要が高いことから、アナリストたちは、「200mm工場の製造能力に対する需要は、今後数年間で拡大していく見込みだ」と予測しているという。
SMICの200mm工場のキャパシティーは、月産23万3000枚に達し、既存の顧客企業にも十分に対応できている。しかし、この先200mmの需要がさらに高まっていくと予想されるため、同社は今後数年の間に、製造能力を拡充しなければならないだろう。ただ、新旧の200mm工場向け製造設備は、見つけるのもたやすいことではない。
SMICの300mmプロジェクトは、同社にとって複雑な存在となっている。300mm工場は、建設費や設備費、稼働コストなどが非常に高額だ。同社は以前、300mm工場を運営していたが、収益性が悪化したために、その一部を売却せざるを得なくなった。
現在は、4つの300mm工場を稼働させている。北京近郊にある2つの工場の1つ「2 P1」は、55nm〜180nmプロセス技術を適用したウエハー処理が可能で、製造能力は月産で最大5万2000枚に達する。もう一方の「2 P2」工場は、28nm/40nmプロセス技術を使用してウエハー処理を行い、製造能力は月産5万枚である(2 P1工場で使われている処理装置は、2 P2工場のプロセス技術でも使用可能)。また、上海の300mmウエハー工場「8 P1」は、2020年第1四半期の時点で、製造能力がわずか月産2000枚程度にとどまる。そして「JN1」工場は、FinFETベースのプロセス技術向けに設計されている。さらに、深センにある300mm工場は現在、製造能力を拡大しているところだという。
SMICの300mm工場の製造能力は、TSMCの300mm工場「GigaFab」ほど大きくないが、「キャパシティーは、適用されているプロセス技術によって大きく変化する」という点に注意する必要がある。マルチパターニングの適用が増加すれば、ウエハーがクリーンルームの中にとどまる時間も長くなるためだ。規模が大きくなればコストは下がるが(GigaFabがウエハー当たりの稼働コストを削減できたのもこのためである)、膨大な先行投資が必要なだけでなく、高い稼働率が確実に保証されていなければならない。SMICにとって売上高シェアの大部分を占めているのが、成熟した実績あるプロセス技術であるという点を考慮すると、同社が中規模の工場にこだわるのは、正しい考えなのではないだろうか。
SMICの経営陣は、同社にはいずれ、最先端のプロセス技術を適用可能な大規模工場が必要になるということをよく理解している。香港に拠点を置く金融サービス会社Bocom International Holdingsのアナリストを務めるChristopher Yim氏は、「SMIC最新の北京工場および上海工場は、かなり規模が大きく、さまざまな種類のツールを供給することができる。例えば、上海の300mm対応SN1工場は、完全に設備を整えた場合、その建設コストは約100億米ドル規模に達し、製造能力は最大7万WSPMを実現できる見込みだ。しかし、このような規模の工場は、政府投資を必要とするため、SMICはこれまで地方自治体と協業するという事業モデルを採用してきたが、それをある程度変えることになるだろう」と分析している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.