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コロナ禍を考察する 〜ベンチャー投資から日本に必要なDXまでイノベーションは日本を救うのか(36)番外編(2/3 ページ)

今回は、最終回の前の番外編として、AZCAが以前から行ってきた働き方をご紹介するとともに、コロナがもたらすベンチャー投資への影響や、コロナが加速するであろうDX(デジタルトランスフォーメーション)について触れてみたい。

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ベンチャーへの投資は控え目

 COVID-19は、企業の業種や規模にかかわらず、さまざまな分野のビジネスに大きな影響を及ぼしている。シリコンバレーのみならず、米国全体においても幾つかの顕著な現象が見られる。

 まずVCの投資動向は、一般的には先行きの見えない中、投資を控えるところがほとんどと言って良い。米国におけるVC投資は、2001年のネットバブル期には10兆円以上に上った。だがネットバブル崩壊後は大幅に減少し、2003年に底を打つ。その後、回復基調に乗ったが、2008年のリーマンショックで再び大きく落ちこんだ。その後回復基調に乗り、2019年にはネットバブルを上回る14兆円以上もの資金が1万社を超えるベンチャー企業に投資されている。

 コロナによる投資の減少幅は、恐らく2008年のリーマンショック以来の規模になるだろう。容易に想像できることだが、旅行関連やホテル、ライドシェアを含む輸送関連といった分野は業績の落ち込みがとりわけ厳しく、ベンチャーから最近急に成長したUberやairbnbなどはいずれも2020年に入ってからの売り上げが80%から90%も落ち込んでいる。オンライン旅行代理店のBookings Holdingなどは、パンデミック以降、予約よりも予約の取り消しの方が多い状態になっているという。これらの分野での後続のベンチャー企業は、資金調達は当分諦めた方が良さそうだ。

 一方で、e-コマース、リモートワーク、オンラインの電子決済、動画サービス、クラウドサービス、遠隔医療などは、今後さらに広がると予想されていた将来のニーズが加速され、実用化と普及が進んでいる。e-コマースのAmazon、フードデリバリーのUber EatsやGrubhub、電子決済のPayPal、動画サービスのNETFLIX、クラウドプラットフォーム「Azure」を持つMicrosoft、遠隔医療のTeladoc Healthなどはパンデミックになってからいずれも大幅な売り上げ増になっている。

 最も分かりやすい例が、ビデオ会議システムを手掛けるZoom Video Communicationsだろう。2020年2月時点では、1日のユーザーは1000万人だったのが、4月末には1日当たりのZoomミーティングへの参加者数は3億人を突破した(図1)。


図1:Web会議ソフトウェアの使用者数の推移 出典:Zoom Video Communications(クリックで拡大)

 AZCAは従来、Cisco Systemsの「WebEx」を利用してきたが、メンバーの勧めもあって2019年初めにZoomに切り替えていた。正直に申し上げると、WebExに比べ、Zoomは格段に軽く、ユーザーインタフェースもかなりフレンドリーだと感じた。

 もう一つ、Zoomを使ってみようと思ったきっかけは、創立者Eric Yuan氏の経歴だ。Yuan氏は1997年にシリコンバレーに渡り、WebExに入社し、WebExが2007年にCisco Systemsに買収された後もWebExのチーフエンジニアを務めた。だが、彼が提案したスマホフレンドリーなビデオ会議システムの開発が拒否されたことで、同社を離れ2011年にZoom Video Communicationsを創設した。そのため筆者は、「ZoomはWebExに比べて一世代先を行っているのではないか」と思ったのだ。実際にZoomを使用して、それは正しかったとの感触を持っている。WebExの難点もことごとく解決しているようにも思えた。

 ちなみに、Zoom Video Communicationsは2017年にユニコーン(企業価値が10億米ドル以上のベンチャー企業)となり、2019年4月に株式上場を果たしている。2020年8月時点でYuan氏の純資産は約120億米ドルだ。コロナによって“非接触エコノミー(コンタクトレスエコノミー/Non-contact economy)”がますます広がり、定着すると考えられる中、ビデオ会議は今後最も普及拡大が続くアプリケーションの一つだと筆者は思うが、Zoomの成長はこれを表す典型的な例だと言えるだろう。

コロナ禍で生まれ、生き残るベンチャーは必ず現れる

 現在、多くのVCは新たな投資をほとんど凍結しており、ベンチャー企業の資金調達は困難になっている。ただし、世の中を大きく変えるようなイノベーションを手掛ける企業には、きちんと資金が投入されるだろう。そして大きく育っていくはずである。これは2001年のネットバブル崩壊後、そして2008年のリーマンショックショック以降もそうだった。

 Netflix(1997年)やGoogle(1998年)はネットバブルを生き抜いた数少ない例だが、思い付くままにざっと挙げてみても、2001年以降、時を経ずして創立され、現在大きく成長している企業は、Napster、Wikipedia、Skype(2003年創設)LinkedIn(2003年)、Facebook(2004年)、YouTube(2005年)などいくつもある。

 また、2008年直後に起業された企業も、Credit Karma(2008年)、WhatsApp(2009年)、Venmo(2009年)、Groupon(2008年)、Instagram(2010年)、Uber(2009年)、Pinterest(2010年)、Slack(2010年)、Square(2009年)、Cloudera(2008年)というように数多くある(図2)。


図2:米国経済の推移とベンチャー企業の誕生 出典:AZCA(クリックで拡大)

 今回のコロナによって世界中が大きな痛手を被っているが、今後の生活や社会の在り方、ビジネスの在り方に関して先見の目を持ったベンチャー企業は必ず生まれてくるだろうし、そのような企業は、将来の世の中を形作るのに大いに貢献すると思われる。

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