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コロナ禍を考察する 〜ベンチャー投資から日本に必要なDXまでイノベーションは日本を救うのか(36)番外編(3/3 ページ)

今回は、最終回の前の番外編として、AZCAが以前から行ってきた働き方をご紹介するとともに、コロナがもたらすベンチャー投資への影響や、コロナが加速するであろうDX(デジタルトランスフォーメーション)について触れてみたい。

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日本企業に求められるDX

 多くの弊害をもたらしているCOVID-19だが、日本企業にとって、大きく変革するための好機と捉えることもできるのではないだろうか。

 経済産業省が2018年に発行した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」で提起した「2025年の崖」問題は、同レポートの発行から2年近く経過した今も注目を集めている。「2025年の崖」とは、ITシステムにおける複雑化やブラックボックス化、人材不足といった課題を解消できない場合、DXを実現できないばかりでなく、2025年から2030年にかけて、1年当たり最大12兆円の損失につながる可能性があるとするものである。

 同レポートにおいて、DXは「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」と定義されている(調査会社のIDC Japanが定義したもの)。まさしく日本はコロナ禍において、これを目指すべきではないだろうか(図3)。


図3:DXと企業活動 出典:経済産業省(クリックで拡大)

 製造業においては、2008年のリーマンショックの後、欧米の多くの企業は、サイバーフィジカルシステムを導入したインダストリー4.0に移行しようとしている。日本企業はどうだろうか。インダストリー2.5あたりにとどまっている企業も多いのではないかと感じることもしばしばある。製造以外のところでもレガシーなシステムが足を引っ張り、パッチワーク的な対処でシステムを何とか維持しているので負担も大きくなる。このままでは破綻を免れず、「2025年の崖」が現実のものとして迫ってきている。コロナ禍を受けて、企業がデジタル技術をより積極的に活用することで、リモートワークが可能になる作業も多いのではないか(図4)。


図4:今後は、どこでリモートワークを活用できるのかを考えていく必要がある 出典:AZCA(クリックで拡大)

編集注:経産省は、同省が公開した「DX推進指標」について各企業から収集した“自己診断結果”をまとめ、公開している

 今こそ日本企業はデジタル技術の積極的な活用により大きく変革をしなければ、世界からさらに大きく取り残されることになる。何年か後には、コロナ禍の危機を好機ととらえ変革に臨む企業と、これまでの延長にしがみついて何もしない企業との間には、もう埋めることのできない大きな差が生まれるはずだ。特に経営層はそれを肝に銘じて、DXを実現するための指揮を執ってもらいたいと思う。


「イノベーションは日本を救うのか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜」連載バックナンバー


Profile

石井正純(いしい まさずみ)

日本IBM、McKinsey & Companyを経て1985年に米国カリフォルニア州シリコンバレーに経営コンサルティング会AZCA, Inc.を設立、代表取締役に就任。ハイテク分野での日米企業の新規事業開拓支援やグローバル人材の育成を行っている。

AZCA, Inc.を主宰する一方、1987年よりベンチャーキャピタリストとしても活動。現在は特に日本企業の新事業創出のためのコーポレート・ベンチャーキャピタル設立と運営の支援に力を入れている。

2019年3月まで、静岡大学工学部大学院および早稲田大学大学院ビジネススクールの客員教授を務め、現在は、中部大学客員教授および東洋大学アカデミックアドバイザーに就任している。

2006年より2012年までXerox PARCのSenior Executive Advisorを兼任。北加日本商工会議所(2007年会頭)、Japan Society of Northern Californiaの理事。文部科学省大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)推進委員会などのメンバーであり、NEDOの研究開発型ベンチャー支援事業(STS)にも認定VCなどとして参画している。

2016年まで米国 ホワイトハウスでの有識者会議に数度にわたり招聘され、貿易協定・振興から気候変動などのさまざまな分野で、米国政策立案に向けた、民間からの意見および提言を積極的に行う。新聞、雑誌での論文発表および日米各種会議、大学などでの講演多数。共著に「マッキンゼー成熟期の差別化戦略」「Venture Capital Best Practices」「感性を活かす」など。


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