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CHIPS for Americaの狙いは「ポストグローバル化」半導体は“戦略的産業”(1/2 ページ)

米国では、経済の沈滞化が進む中、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死者数は1日当たり1000人を超えている他、失業手当の申請数は毎週数百万件に及ぶ。そうした危機の中、パンデミックに後押しされている新たな産業政策において、主役になっているのが半導体である。

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 米国では、経済の沈滞化が進む中、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死者数は1日当たり1000人を超えている他、失業手当の申請数は毎週数百万件に及ぶ。そうした危機の中、パンデミックに後押しされている新たな産業政策において、主役になっているのが半導体である。

 高度かつ安全な回路を国内で製造することは、もはや論点ではない。機運は「構築」にあると観測筋は指摘する。

 2020年6月に提出された法案「CHIPS(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors) for America」は、議会予算過程を経て、成立に向けた手続きが進められている。政治家、官僚、そしてIntelを含めた半導体企業は、米国の地での半導体生産を強化するための取り組みをますます支持するようになっている。

 2020年秋には実際の“資金(補助金、支援金)”を入手できる見込みがあることから、米半導体業界は1枚加わろうと奔走している。


Dan Hutchenson氏

 だが、VLSI ResearchのCEOであるDan Hutcheson氏によると、「CHIPS fro Americaは実質的な資金を提供してくれるのか、あるいは単なる机上の空論なのか」という疑問は残ったままだという。さらに重要なのは、「米国政府は長期間にわたりこの新たな産業政策をやり抜くのか」という点だ。

 米国政府と半導体業界の両方は数十年にわたり、グローバリゼーションの提唱に従ってきたが、現在ではそれを180度転換するさなかにある。EE Timesはそのような動きの理由も検証していく。

 われわれはCenter for Strategic and International StudiesのJames Lewis氏と、前出のHutcheson氏に話を聞いた。

われわれはポストグローバル化の時代を生きているのか?

 Hutcheson氏は最近行われたSIAウェビナーの中で、「われわれは“ポストグローバル化”の時代に生きている」と発言し、全員が耳を澄ませた。

 だが、「ポストグローバル化」の真の意味は何なのだろうか?

 Hutcheson氏は、あらゆる国々が周囲に壁を築き始めつつある時代が始まったと確信している。関心はグローバル経済から国家安全への懸念に移った。Hutcheson氏は「1980年代半ば以降、このような状況は全く目にしなかった」と述べた。

材料を海外から調達せずに半導体を製造できるか

 Hutcheson氏は「それはできない。不可能だ」と答えている。

 過去50年間で半導体業界はグローバル化の一途をたどってきたが、その背景には、各国・各地域はそれぞれに優れた領域を持つという事実があった。Hutcheson氏は、例として、日本がリソグラフィとレジスト処理に秀でていることを挙げ、「日本から調達する素材は世界で最も優れている」と言及した。一方、欧州では「製品を完成させること」に膨大な費用をかける傾向があり、1980年代には、システムやプロセスにおいて独自の垂直統合が行われたとHutcheson氏は説明した。そして、現在EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置を提供できる唯一のサプライヤーであるASMLが生まれた。

それならば、ポストグローバル化という考え方の何が魅力なのか

 第1に、米中の技術冷戦という新しい現実がある。第2に、中国の賃金が上昇し続ける中で、中国はコスト競争力を失っている。

 米国の意欲と中国のコスト優位性の喪失は、米国政府とチップ産業が自らを再主張する時が来たという認識を強めている。

 Hutchenson氏は最終的には、「ハイエンド製造業を米国に」という動きが再び活発になると予測している。

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