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EUVスキャナー、出荷は堅調だが稼働率の課題も第6回 SEMI Japan ウェビナー(1/2 ページ)

SEMI Japanは2020年8月25日、「第6回 SEMI Japanウェビナー」を開催した。今回のウェビナーにはASMLジャパンが登壇し、EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置の最新状況を含めた同社の近況を報告した。

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 SEMI Japanは2020年8月25日、「第6回 SEMI Japanウェビナー」を開催した。SEMI Japanは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、リアル展示会/セミナーの開催が難しくなって以来、定期的にウェビナーを開催している。

 今回のウェビナーにはASMLジャパンが登壇し、EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置の最新状況を含めた同社の近況を報告した。

EUVスキャナーの課題は稼働率

 ASMLジャパンのテクニカルマーケティングディレクターである森崎健史氏は、EUV技術について「未来のものではなく、現実的なものになっている」と語る。

 実際、Samsung Electronicsは、EUVを採用した7nmプロセスを適用したモバイルSoC(System on Chip)「Exynos 9825」を発表している他、EUVを用いたDRAMの製造も開始している。中国UNISOCは、6nm EUVを採用した5G(第5世代移動通信)対応チップセット「T7520」を発表した。今後は、EUVを適用したチップを搭載した機器の市場投入も増えていく見込みだ。

 ASMLのEUVスキャナー「NXE:3400シリーズ」の出荷台数は、2020年第2四半期において累計で66台。EUV適用ウエハーは計1100万枚に上り、「2020年末には2000万枚に達する見込み」(森崎氏)だという。

 一方で「いまだに大きな課題も抱えている」と森崎氏は述べる。それが装置の稼働率だ。量産装置としての稼働率は、まだまだ足りない。森崎氏は「出荷した装置のうち、稼働率が高い上位10%では稼働率が90%に近いが、平均では85%程度。こうした装置間のばらつきを減らして、平均で90%を超えることが目標だ」と述べる。


EUVスキャナーの累計出荷台数(水色の棒グラフ)と稼働率(緑/青/オレンジの線グラフ)。緑は、稼働率が高い上位10%の装置の平均稼働率。オレンジは下位10%の平均稼働率である。上位と下位では、稼働率に大きなギャップがあることが分かる 出典:ASMLジャパン(クリックで拡大)

 そのため、ASMLは装置のダウンタイムを短縮するための取り組みを継続的に続けている。例えば、2020年第2四半期には、最新のNXE:3400システムにおいて、モジュラー型のチャンバーへのアップグレードを実施。これによって、光源で使われているスズをインラインで補充できる機能が新たに追加された他、コレクターミラーの交換時間を大幅に短縮できるので、ダウンタイムを減らして稼働時間を上げることにつながるという。

次世代プラットフォームはNA=0.55を目指す

 ASMLは現在、最新のEUVスキャナーとして「NXE:3400C」の出荷を既に開始している。スループットは、標準条件下で170wph(Wafer per hour)だという。NXEのプラットフォームではレンズの開口数(NA)は0.33で、解像度は13nmだが、次世代プラットフォームとなる「EXE」ではNAは0.55、解像度は8nm対応を目標としている。「EXEベースの装置は、2022年をメドにまずは研究開発用に出荷し、量産用では2024年ごろの出荷になるのではないか。5nm、3nmを含め、次の10年使ってもらえるようなプラットフォームとして位置付けている」(森崎氏)


EUVスキャナーの次世代プラットフォーム「EXE」の開口数/解像度 出典:ASMLジャパン(クリックで拡大)

 森崎氏は、0.55のNAが必要な理由について「NAを上げることはプロセスの簡略化とデバイスの高性能化につながる。さらに、NAが高いとマルチパターニングの数を減らせるので、コスト低減も可能だ。われわれの試算では、50%以上の低コスト化が見込める。その他、3〜6倍のサイクルタイム低減、オーバーレイ(重ね合わせ)とフォーカス性能の向上も可能だ」と説明した。

 一方で「EUV技術は装置だけあっても使いものにはならない」(森崎氏)とし、ブランクやパターニング技術、欠陥検出/検査なども含めた、EUVのインフラが整う必要があると語った。7nmに関しては、こうしたインフラが整っているが、5nmや3nmについては開発中あるいは、要開発がほとんどだ。「日本はEUVのインフラをかなり支えている国。ぜひ協力していただきたい」(森崎氏)

左=高いNAによるメリット/右=EUV技術には、装置以外の要素も欠かせない 出典:ASMLジャパン(クリックで拡大)

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