EUVスキャナー、出荷は堅調だが稼働率の課題も:第6回 SEMI Japan ウェビナー(2/2 ページ)
SEMI Japanは2020年8月25日、「第6回 SEMI Japanウェビナー」を開催した。今回のウェビナーにはASMLジャパンが登壇し、EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置の最新状況を含めた同社の近況を報告した。
業績は好調、AR技術でリモートサポートを強化
ASMLジャパン社長の藤原祥二郎氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響について言及した。
藤原氏によれば、COVID-19の影響は大きく3つあるという。まずは、人の移動が制限されたことで、中国向け装置の出荷に一部遅れが発生した。サプライチェーンにも遅れがあり、それによってNXE:3400Cの出荷も若干遅れたという。出荷の遅れを懸念する顧客の要請により、通常は行う工場前出荷検査の一部を省略したケースもあった。
一方で、2020年第2四半期の業績については売上高33億ユーロで、前期比36%増という結果になった。2020年上半期では前年比で20%増加しており、「成長路線を進められている」(同氏)とする。
同年第3四半期の売上高は36億〜38億ユーロを見込んでおり、年間では2桁成長を達成できるとみている。藤原氏は「供給や出荷では短期的な変動見られたが、現状はほぼ解消している。足元の需要は、大きな変動がなく堅調に推移している。ただし、2021年以降の市況については、まだ慎重に見極めている段階だ」と述べた。
COVID-19の影響で、サポート面での課題が浮き彫りとなった。藤原氏は「人の移動制限が依然として続く中、熟練したエキスパートの現場派遣が難しくなった」と述べる。
そこでASMLは、リモートでサポートする技術を積極的に取り入れている。「装置を設置している現場とASMLのグローバルサポートセンターを接続し、リアルタイムで指示できるようサポートの幅を広げている。これまでも、装置のチェックや解析、診断を実施してきたが、今回はMicrosoftの『HoloLense』を活用し、専門性を必要とする作業も、ASMLのエキスパートの指示に基づいて行えるようにした」(藤原氏)。現在、75個以上のHoloLenseを世界の現場で活用しており、日本でも複数の顧客が同リモートサポートを使用しているという。
医療ではドライサイエンスへの注目が高まる
ASMLジャパンに続いて、スタンフォード大学医学部麻酔科・創薬医療機器開発研究所所長などを務める西村俊彦氏が登壇。創薬のプラットフォームについて説明した同氏は、医療分野における半導体技術について、「今後は、どれだけ正確な脳波や心電図、神経データを取得できるかが重要になってくる。そうした中、センサーを使うならば、やはり日本製を使用したい。身体に貼り付けられるフレキシブルなセンサーにも期待している。総じて、バイオテクノロジー業界では、ドライサイエンスに大きな注目が集まっている」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- TSMC、「N4」プロセスの量産を2022年に開始
TSMCは2020年8月24〜26日に年次イベント「TSMC 2020 Technology Symposium」をオンラインで開催し、現在「N5」プロセス適用製品の生産を拡大していく中で、「N4」プロセスを開発したと発表した。2021年に生産を開始し、2022年には量産に着手する予定だという。 - SMICが14nmから“7nmに近いプロセス”に移行か
SMICは14nmプロセスの新バージョンであるN+1を発表した。SMICの広報担当者はEE Times Chinaに対し、「N+1は2020年第4四半期に限定生産に入る計画だ」と語った。 - 早くもTSMCの代表的なプロセスに? 7nm技術
2019年に発表された多くのSoC(System on Chip)が7nmプロセスを採用している。だが、「7nm」が全て同等というわけではない。本稿では、現在高い評判を得ているSoCについて要約する。下表に、それらのSoCに用いられているプロセスをまとめた。 - 半導体産業はコロナに負けない! 製造装置市場の動向を読み解く
コロナ禍にあっても半導体産業は強いようだ。特に半導体の微細化は止まるどころか、むしろ加速しているようにすら見える。今回は、製造装置市場の動向を、過去も含めて読み解いてみたい。 - 1nmが見えてきたスケーリング 「VLSI 2020」リポート
初のオンライン開催となった「VLSIシンポジウム 2020」から、スケーリング、EUV、3D ICの3つについて最新動向を紹介する。