SJ構造を用いたバイポーラトランジスタ開発:半導体リレーの小型/低損失化に向けて
新日本無線と山梨大学は2020年8月、コレクタ領域をスーパージャンクション構造としたシリコンバイポーラトランジスタ(SJ-BJT)を開発したと発表した。半導体を用いたリレー(ソリッドステートリレー/SSR)の小型化、低損失化が実現できるパワーデバイスだという。
新日本無線と山梨大学は2020年8月、コレクタ領域をスーパージャンクション構造としたシリコンバイポーラトランジスタ(以下、SJ-BJT)を開発したと発表した。半導体を用いたリレー(ソリッドステートリレー/以下、SSR)の小型化、低損失化が実現できるパワーデバイスだという。
半導体リレーなどとも呼ばれるSSRは、一般にMOSFETやサイリスタ、トライアックなどのパワー半導体デバイスが使用されるが、「各デバイスは近年、性能限界に近づきつつあり、新しい概念の低損失パワー半導体デバイスの開発が必要とされていた」(新日本無線)という。
そうした中で、新日本無線と山梨大学は、パワーMOSFETで高耐圧と低オン抵抗を両立する技術として広く導入されているスーパージャンクション(SJ)技術に着目。SJ技術をBJTに用いることで、高耐圧を維持しつつオン抵抗の低減と、電流増幅率の向上を実現した。
開発したSJ-BJTはn型半導体領域とp型半導体領域を交互に周期的に配置し、パワー半導体の高い耐圧と低いオン抵抗を両立する構造を採用した。なお、開発したSJ-BJTは、SJ-MOSFETにみられる効果だけでなく、ベース電極からSJのP型領域を介して、SJのn型領域へホールが効率的に注入される効果も生じた。このホールの注入効果により、電子電流が促進される伝導率変調現象が起こり、電流増幅率を増加させることが可能になったという。
新日本無線では「従来のIGBT、サイリスタ、トライアックは、コレクタ側もしくはアノード側のp型領域からホールを注入する構造であるため、素子をオンさせるのに少なくとも0.7V以上のオン電圧が必要だった。SJ-BJTはベース電極からホールを注入するために、低コレクタ電圧から導通し、原理的にオン抵抗を低くすることができる」としている。
なお両者は、家電や産業機器などに向けたSSRへの応用を目指して開発を継続する方針。なお今回の開発成果は、パワー半導体デバイスの国際シンポジウム「ISPSD2020」(会期:2020年9月13〜18日/オンライン形式)のプロシーディング(講演要旨集)で発表され、会期中のポスターセッションで詳細が報告される予定だ。
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