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「米国に売られたケンカ」は買うしかない? 絶体絶命のHuaweiに残された手段とは湯之上隆のナノフォーカス(30)(4/5 ページ)

Huaweiを取り巻く状況が、ますます厳しくなっている。米国による輸出規制の厳格化により、プロセッサだけでなく、CMOSイメージセンサーやメモリ、そしてパネルまでも調達が難しくなる可能性が出てきた。Huaweiが生き残る手段はあるのだろうか。

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R&Dを重要視するHuawei

 スマートフォンの出荷台数で世界1位になり、通信基地局の売上高シェアで世界1位となった背景には、HuaweiがR&Dを何よりも重要視していることが挙げられよう。ここ5年間、HuaweiのR&D投資額は、売上高の約15%を占めており、2019年には約190億米ドルに達した(図11)。このHuaweiのR&D投資額の水準は、世界の中で、Amazon(推定約222米億ドル)、Googleの親会社のAlphabet(221億米ドル)に次ぐ第3位の規模である(図12)。


図11:HuaweiのR&D投資額と売上高に占める割合(〜2019年) 出典:Huaweiのアニュアルレポートを基に筆者作成(クリックで拡大)

図12:2019年R&D投資額トップ15 出典:The 2019 EU Industrial R&D Investment Scoreboardを参考にした。ただしHuaweiの数値だけはアニュアルレポートによる(クリックで拡大)

 日本企業ではトヨタ自動車がやっと15位にランクされており、Huaweiはその倍近い約190億米ドルものR&D費用を投入していて、19.6万人の社員のうち約半分に当たる9.6万人もの研究開発者がそれを使ってさまざまな技術開発を行っているのである。

 そして、Huaweiはその研究開発成果の多くを、特許として出願しており、例えばPCT国際特許出願数では、2017年〜2019年の3年間で、2位以下を大きく引き離して圧倒的なトップの地位を占めている(図13)。また、5G関連の標準必須特許(SEP)の保有件数でも、2020年1月時点で、3147件と世界1位になっている(図14)。


図13:PCT国際特許出願件数トップ10 出典:WIPOの”Patent Cooperation Treaty Yearly Review 2020”のデータ(クリックで拡大)

図14:5G関連の標準必須特許(SEP)の保有件数(2020年1月) 出典:ドイツの特許情報サービス企業アイプリティクスのデータ(電波新聞2020年6月10日) (クリックで拡大)

 このように、Huaweiの業績や実績を概観してみると、スマートフォンや通信基地局で世界トップになったのは、ZTEのように中国政府からの支援を受けたからではなく、民間企業としてのHuaweiがR&Dを重要視し、そこに最大限のリソースをつぎ込んできたからだと言えよう。

 そのHuaweiが、米国の激しい攻撃により、企業存亡の危機に直面している。Huaweiが生き延びる道は、無いのだろうか?

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