同一チップを“できばえ”で別シリーズに、MediaTekの開発力:製品分解で探るアジアの新トレンド(48)(2/3 ページ)
「5G普及」が2年目に突入し、5G端末向けのプラットフォームが出そろってきた。2020年には、モデムチップ大手のMediaTekとUnisocも本格的に参戦している。今回は、MediTekの「Dimensity」シリーズを紹介する。
POPとMCMで高性能版、廉価版をすみ分け
図3は、廉価版のDimensityを用いた中国Xiaomiのスマートフォン「Redmi 10X 5G」である。価格は5G対応で2万円台。弊社は2万5000円で入手した。5G対応スマートフォンは、普及2年目にして既に2万円台となっているのである! 本格的な普及が始まっているのもうなずける。
内部は図4のように、先のDimensity1000+とは異なる「Dimensity 820」が採用されている。こちらは、Cortex-A76×4コア、Cortex-A55×4コア、GPUはG57が5コア、AIプロセッサAPU 3.0が搭載されている。CPU、GPUは若干グレードが落ちるが、普及レンジには十分なものとなっている。
一番大きな差は、Dimensity 1000+がLPDDR4Xを8GB搭載し、プロセッサの上に搭載するPackage On Package(POP)技術を用いて、DRAMとプロセッサを最短距離で配置しているのに対し、Dimensity 820ではフラッシュメモリ側にLPDDR4Xを搭載する(配線長はやや長くなる、つまり速度が遅くなる)Multi Chip Memory(MCM)を採用する点にある。前者は高速で高価、後者はやや性能が落ちるが安価という特長を持つ(詳細は省略)。性能重視の高性能版ではPOPを、コスト重視の廉価版ではMCMを採用することで、すみ分けを図っているのである。
表1は、今回の2機種のMediaTekのチップセットのBOM(Bill of Materials)表の一部である。高性能版のiQOO Z1、普及版のRedmi 10X 5Gともに内部の骨格(アプリケーション処理、通信処理)はMediaTekのチップセットで構成されている。プロセッサ、電源最適化のための電源IC、通信用のトランシーバーの他、Wi-FiやBluetooth、GPSレシーバーもMediaTek製となっている。この骨格にセンサーとオーディオ用のアンプなどを付加すれば5Gスマートフォンは完成するようになっている。
2機種とも、11個のMediaTekのチップセットを搭載している。廉価版といえどもきめ細かい電源処理や通信制御を行っており、トランシーバーや電源ICの多くはハイエンド、廉価版ともに共通となっている。プロセッサが異なるだけとも言えるだろう。共通化できる部分と差異化する部分を使い分けることで、コストを最小化しているのだ。表1では共通化されているチップにオレンジ色のハッチングを入れた。共通部品が多いこともDimensityの特長である。
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