同一チップを“できばえ”で別シリーズに、MediaTekの開発力:製品分解で探るアジアの新トレンド(48)(1/3 ページ)
「5G普及」が2年目に突入し、5G端末向けのプラットフォームが出そろってきた。2020年には、モデムチップ大手のMediaTekとUnisocも本格的に参戦している。今回は、MediTekの「Dimensity」シリーズを紹介する。
「5G普及」2年目でプラットフォームも続々登場
2020年は5G(第5世代移動通信)通信普及の2年目(日本では2020年3月から商用サービスが開始されたので「元年」だが)、海外では普及モデルにも5G通信が実装され、2万円台、3万円台の機種が続々とリリースされている。2019年はQualcomm、Samsung Electronics(以下、Samsung)、Huawei/HiSiliconが5G通信対応のチップセット(プラットフォーム)を製品化して多くのスマートフォンに活用した。上記3社は普及向けチップセットとハイエンド向けの2本柱を立てており、普及向け5Gプラットフォームを続々と製品化したのである。
Qualcommのハイエンド向けは、「Snapdragon 865」と5Gモデムの「Snapdragon X55」の2チップ構成である。普及向けは、モデムとアプリケーションプロセッサを1チップ化した「Snapdragon765」だ。Samsungのハイエンドは「Exynos 990」と5Gモデムの「Shannon 5123」の2チップで、普及向けは「Exynos 980」の1チップという2種類のプラットフォーム構成である。またHuawei/HiSiliconはハイエンドが「Kirin 990」、普及向けが「Kirin 820」という2構成となっている。Huawei/HiSiliconはハイエンドも1チップ構成だ。
2019年には、スマートフォンのチップを提供するメーカーで重要な2社が5G通信には参戦していなかった。台湾MediaTekと中国Unisoc(旧Spreadtrum Communications)である。だが両社も2020年に5Gのプラットフォームを発表し、徐々に採用が始まっている。
Unisocは「T7520」を発表し、間もなく中国メーカーの5Gスマートフォンに採用が始まるようだ(本連載の中で報告していく予定である)。製造プロセスは「世界初」(同社)のTSMC 6nmと発表されている。一方MediaTekは2019年後半に5Gプラットフォーム「Dimensity」を発表し、2020年には採用実績を重ねている。4Gスマートフォンでは多くの実績を持つ両社は、5Gでも普及価格帯の端末で一気にシェアと実績を伸ばす可能性はあるだろう(Huawei問題でHiSiliconの採用が減る可能性も十分あることが両社には追い風になるという予想も立てられる)。
MediTekの「Dimensity」
Dimensityは4G時代にMediaTekが「Helio」と命名したプラットフォームからネーミングを一新したもの。製造プロセスもほぼ最先端の7nmを活用する(ほぼというのは5nm/6nmも製品化され始めているため)。
図にはないが、MediaTekのDimensityを初めて採用したのは、中国OPPOの「Reno3 5G」である。内部には「Dimensity 1000L(MT6885Z)」が採用されている。図1は、採用第2弾となる、中国vivoの「iQOO Z1」である。日本でも通販などで入手できる機種だ。弊社は3万5000円ほどで新品を購入した。
内部は図2のように、先のDimensity 1000L(LはLiteの意味)よりも性能がアップした「Dimensity 1000+(MT6889Z)」が採用されている。Dimensity 1000+では、演算性能やディスプレイのリフレッシュレート144Hzにも対応した。
Dimensity 1000シリーズには、1000+、1000、1000Lの3種が存在するが、いずれもArm Cortex-A77を4コア、Cortex-A55を4コア、GPUにはArm Mali G77を9コア、AI(人工知能)プロセッサとして「APU 3.0」が搭載されている。Dimensity 1000+は仕様的にもQualcommやSamsungの上位プラットフォームにも十分対抗できるハイエンドなものになっている。
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