ついに解禁された「60GHzレーダー」の可能性を聞く:車載、家電、産機、スマホにも(3/3 ページ)
2020年1月、日本でもついに「60GHzレーダー」が解禁となった。今回、同技術の開発を進めるインフィニオン テクノロジーの担当者がその技術の概要、展望と自社の取り組みを語った。
産業分野でも下図の通り、人の位置検出によるオフィス/工場内での照明制御、ジェスチャーによるタッチレススイッチのほか、FAロボット周囲の立ち入り禁止区域内の人検出や、施設出入り口での入退室管理、搬送ロボットの障害物検知などに活用できる。
特にタッチレススイッチなどの用途は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響から案件が増加しているという。また、感染リスク軽減のため入退室数制限も行うケースが多いが、「60GHzレーダーであれば進行方向も1つのレーダーで判断が可能だ。今後、新しい生活様式に合わせたセンサーとしての利用が見込まれる」としている。
「マッチ棒の先端サイズ」の60GHzレーダーIC
このように、60GHzレーダーは「非常に応用範囲が広く、新しく利用できるようになった革新的な製品技術」であり、インフィニオンはその普及促進を目指した製品開発を加速。既に民生機器向けの60GHzレーダーIC「BGT60TR13C」の量産を開始している。
BGT60TR13Cは、5.0×6.5mmというマッチ棒の先端ほどの小型化を実現しつつも、送信1、受信3チャンネルのアンテナを内蔵し、複雑な高周波回路の設計も不要にしたというもの。既に「大手スマホメーカー」の搭載実績もあると説明している。
今後は、2020年内に送信1、受信1チャンネルで人感センサーに特化した製品をリリースするほか、2021年中ごろには車室内センシング向け製品として送信2、受信4チャンネルの製品もリリース予定。また、2021年にはBGT60TR13Cと制御マイコンを搭載し電波認証も取得したセンサーモジュールの提供も予定しており、顧客の開発期間、工数を削減し普及を促進していく方針だとしている。
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