RF MEMSスイッチの新興企業が4400万ドル獲得:5G向けでも注目集める(2/2 ページ)
小型RF MEMSスイッチの先駆者であるMenlo Microが2020年10月に開催されたシリーズBの投資ラウンドで4400万米ドルの資金を調達した。
機械式リレーと半導体スイッチの長所を組み合わせたMEMSスイッチ
Giovanniello氏は、「デジタルマイクロスイッチ技術は、電気機械式リレースイッチの長所(超低リーク電流、低抵抗、極めて高い直線性など)と、半導体スイッチの長所(極めて高い信頼性、サイズの小ささ、耐久性など)とを組み合わせた技術だといえる」と説明する。
また同氏は、「他の企業もかつて、このような技術で困難を乗り越えようとしていたが、どこもうまくいかなかった。われわれが成功したのは、GEがこの分野において長期にわたり研究開発に取り組んできてくれたおかげだ」と述べる。「GEは現在も、高温や高電圧、高出力が求められる工業要件に対して、非常に大きな強みを持っている。われわれは、GEのノウハウをベースとしながら、他のアプリケーションにも適用してきた」(同氏)
Menlo Microは、2016年の設立当初、CorningやGE Ventures、Microsemi、Paladin Capital Groupなどの企業からサポートを受けていた。Menlo Microは、今回のシリーズB投資ラウンドで資金を獲得したことにより、合計で7500万米ドルの資金を調達したことになる。この投資ラウンドには、40 North Venturesや、Pica、Paladin Capital、Vertical Venture Partners、Future Shapeなどの投資家たちが参加したという。Future Shapeは現在、Nestの創設者の1人であるTony Fadell氏が社長を務めている。
Giovanniello氏は、「調達資金の一部は、現在35人の従業員を増やすために充てたいと考えている。まずは、設計に対応可能なエンジニアを至急募集したい。しかし資金の大半は、生産能力を拡大するために投じ、2020年末までには1カ月当たり10万個以上、1年間当たりでは数百万個の生産量を実現したい」と述べている。
「この他にも、テスト/測定分野においてチャンスを開拓していく考えだ。同分野の信号スイッチングは膨大なため、当社の小型RF MEMSスイッチにとって理想的だといえる」(同氏)
スイッチの寸法は通常50×50μmで、シングルパッケージに数百個のエレメントが搭載されている。一般的なリレーは、電磁石によって動作が始動するが、Menlo MicroのRF MEMSスイッチは、単純に50〜100Vの範囲でDC電圧を使用して静電場を作り出し、接点にビームを引き寄せるという点で異なっているという。
Menlo Microは、「当社は既に、30社を超える主要な顧客企業向けにサンプル出荷している。この中には、5Gネットワークインフラや高性能航空宇宙システム、高電力RF、防衛アプリケーションなどの開発メーカーが含まれている」と述べる。
またGiovanniello氏は、「Menlo Microの顧客企業に、携帯電話機やタブレットPCメーカーは含まれているのか」とする質問に対し、「ユースケースとしては想定しているが、同市場では膨大な生産量が必要な上、コスト構造も極めて厳しいため、直接参入はしないという判断に至った。現在は、消費者市場向けのライセンス契約の可能性について、議論を進めているところだ」と答えた。
同社の他にも、新興企業Cavendish Kineticsが、携帯電話機/タブレットPC市場にターゲットを定めたRF MEMSスイッチの開発を手掛けていたが、2019年10月にQorvoによって買収された。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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