コロナ影響をほぼ見切った点を評価、電機8社20年度上期決算を総括:大山聡の業界スコープ(36)(3/4 ページ)
2020年11月11日に東芝の2020年度上半期(2020年4〜9月)決算発表が行われ、大手電機8社の決算が出そろった。各社ともコロナウィルス感染拡大の影響を受ける中、年間見通しを増額修正している企業が散見される点はポジティブに評価できる。冬場に向けて感染拡大も懸念されるため、予断を許さないが、各社のコロナに対する業績面での見切りについて、紹介していきたいと思う。
コネクティッド部門の下振れが大きいパナソニック
パナソニックの2020年度上期業績は、売上高3兆591億円(前年度比7853億円減)、営業利益966億円(同436億円減)、当期利益570億円(同522億円減)であった。
アプライアンス部門は減収減益、ただし日本を含め市況は回復傾向で、冷蔵庫や空調などは収益面でプラス要因となっている。ライフソリューションズ部門も減収減益、住宅新築着工戸数の減少が大きく影響した。コネクティッドソリューションズ部門は減収大幅減益、航空機運航減少でアビオニクスの需要が落ち込んだ。プロセスオートメーションやアビオニクスが減収となり、コロナの影響もあって若干の減益となった。オートモーティブ部門は大幅減収ながら赤字幅は若干縮小、自動車需要の低迷の中で、北米車載電池工場の生産性が向上した。ただしコストダウン要求の厳しい車載電池事業の今後の見通しは予断を許さない。インダストリアルソリューションズ部門は減収ながら増益、情報通信インフラ向け需要増と固定費削減が主要因だった。
2020年度通期業績予想は、売上高6兆5000億円(同9906億円減)、営業利益1500億円(同1438億円減)、当期利益1000億円(同1257億円減)、前回の計画を据え置いた。コネクティッドソリューションズ部門の収益悪化(同536億円減)が大きいが、中長期的にはオートモーティブ部門の見通しもさらに厳しくなる可能性がある。
8Kエコシステム部門の収益改善がカギとなるシャープ
シャープの2020年度上期業績は、売上高1兆1421億円(前年比215億円増)、営業利益275億円(同94億円減)、当期利2259億円(同48億円減)であった。
スマートライフ部門は、コロナの影響が4〜6月期は出たものの、7〜9月期は下振れがなく、前年比で微減収ながら増益を達成した。空気清浄機の需要増や白物家電の高付加価値化が好調の原因である。8Kエコシステム部門は、コロナの影響で売上高が688億円、営業利益が241億円下振れたものの、テレビの売り上げ増、PCおよびスマホ向けパネルの需要回復で、上期トータルで黒字に転じた。同社は、この部門が1〜3月期をボトムに回復基調に入ったと主張している。ICT部門は、コロナの影響の売上高が29億円、営業利益が10億円それぞれ上振れたが、前年からは減収減益となっている。前年比でPCの需要が低迷しているが、収益面では比較的安定しているもよう。
2020年度は、売上高2兆3500億円、営業利益820億円、当期利益500億円と通期業績予想を据え置いたが、これを達成できるかどうかは、8Kエコシステム部門の収益がどこまで回復するかにかかっているだろう。親会社の鴻海精密工業から同部門にどれだけの需要が割り振られるか、についても着目したい。
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