コロナ影響をほぼ見切った点を評価、電機8社20年度上期決算を総括:大山聡の業界スコープ(36)(4/4 ページ)
2020年11月11日に東芝の2020年度上半期(2020年4〜9月)決算発表が行われ、大手電機8社の決算が出そろった。各社ともコロナウィルス感染拡大の影響を受ける中、年間見通しを増額修正している企業が散見される点はポジティブに評価できる。冬場に向けて感染拡大も懸念されるため、予断を許さないが、各社のコロナに対する業績面での見切りについて、紹介していきたいと思う。
イメージセンサーが輸出制限を受けながら増益修正のソニー
ソニーの2020年度上期業績は、売上高4兆824億円(前年比344億円増)、営業利益5462億円(同363億円増)、当期利益6929億円(同3529億円増、繰延税金資産に対する評価性引当金の一部、2149億円の取り崩しを含む)であった。
ゲーム&ネットワークサービス分野は、ゲームのソフト、ハード共に巣ごもり需要で増収増益だった。通期見通しも、8月時点から売上高で1000億円、営業利益で600億円増額修正している。音楽分野はストリーミングサービス売上高が増加し、減収ながら増益となった。年間見通しも8月時点から売り上げで600億円、営業利益で220億円増額修正し、前年を上回る見込みである。映画分野は劇場公開での売り上げが大幅に減少したが、広告宣伝費の減少で増益となった。通期見通しも8月時点から営業利益で70億円増額修正している。エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野は、主にテレビの需要減で減収減益となった。しかし年間見通しは、オペレーション費用の削減などで営業利益を70億円増額修正している。イメージング&センシング・ソリューション分野は減収減益、特にHuawei向けの輸出制限が大きな要因となっている。通期見通しは、8月時点から売上高で400億円、営業利益で490億円減額修正している。金融分野はソニー銀行および損保が好調で増収増益、通期見通しも、8月時点から売上高で600億円、営業利益で130億円増額修正している。
ソニー全社の2020年度通期業績予想は、売上高8兆5000億円(前年比2401億円増、前回から2000億円増額)、営業利益7000億円(同1455億円減、同800億円増額)、当期利益8000億円(同2178億円増、同2900億円増額)としており、コロナの影響を受けながら、さらにHuawei向けの輸出制限を受けながらも見通しを増額修正している点は、高く評価できよう。
総括
コロナ禍にありながら、前回から会社計画を上方修正したソニー、日立製作所の健闘振りはポジティブに評価できる。特にソニーは、コロナの影響だけでなくHuawei向けの輸出制限が強化される中での上方修正であることに着目したい。一方で、IT関連の需要が高まる中で恩恵にあずかれないNEC、富士通の決算内容には不満を感じる。DXを推進する企業が急増する中で、今この時期だからこそ期待できる需要があっても良いのではないか、少なくともそういった需要を掘り起こすようなアクションを積極的に仕掛けるべきではないか、という歯がゆさを禁じ得ない。
筆者プロフィール
大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現IHS Markit Technology)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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