勢力図が変わり始めたRAN市場:Samsungが台頭(1/2 ページ)
モバイル通信市場の中でも、特にRAN(Radio Access Network)市場は、これまで長期間にわたり、比較的動きの遅い複雑な分野であるとされてきた。しかし今や、その状況は全く変わってしまった。ここ最近で、大きな動きがいくつもあったからだ。
モバイル通信市場の中でも、特にRAN(Radio Access Network)市場は、これまで長期間にわたり、比較的動きの遅い複雑な分野であるとされてきた。
しかし今や、その状況は全く変わってしまった。ここ最近で、以下のようなことが起こったためだ。
- Nokiaは、2020年第3四半期の業績が悪化したことを受け、組織再編に取り組むことを発表し、近い将来の予測についても悲観的な見方を示した
- 最大のライバル企業であるHuaweiは、2020年前半にほぼ予想通りの業績を上げることができたが、米国の制裁措置によって受けた打撃が目に見えて大きくなってきている。また、同社に対して、国家安全保障を理由に5G(第5世代移動通信)関連製品の供給を停止する国の数が日に日に増えている
- Samsung Electronics(以下、Samsung)やNECなどの“眠れる巨人”が、協業によって準備態勢を整え、RAN市場への有意義な参入を実現し始めている
- 無線ネットワークをオープンソース化するOpen RANに向けた取り組みが、二歩前進して一歩後退するという状況にある
これらのトピックについて一部、以下に取り上げていきたい。
米国EE Timesは、「The Redemption of Nokia(Nokiaの再生に向けた取り組み)」の中で、1世紀半の歴史を持つNokiaがこれまでに実施してきた数々の改革や再生事業について、年代順にまとめている。
こうした背景を見ると、Nokiaが2020年10月末に発表した最新の事業再建計画は、大変革をもたらすわけではないかもしれないが、CEO(最高経営責任者)に就任後間もないPekka Lundmark氏の力強い意志表明だといえる。
Nokiaは、2020年第3四半期の売上高が前年比7%減の62億米ドルと振るわず、今後の見通しも暗い上、Samsungが米国内でVerizonとの協業を発表したために、NokiaがVerizonとの間で複数年にわたって結んできた66億米ドル規模のRAN契約を失うという厳しい痛手を負ってしまった。こうしたことからLundmark氏は、新戦略を提示することによって、これまでモバイル通信市場に挑戦していく上で大々的に掲げてきた“エンドツーエンド主義”に、終止符を打つ考えなのではないだろうか。
さらにNokiaは、世界最大市場である中国において、RAN関連の契約を1つも獲得できなかったことや、2021年の世界RAN市場におけるシェアが27%減少するとみられることなどから、状況の悪化に拍車が掛かっている。
Lundmark氏は、現在のところ資産売却の予定はないということを強調しているが、「われわれは現在、主要な事業部門として、『モバイルネットワークス(Mobile Networks)』と、『IP(Internet Protocol)/固定ネットワークス(IP and Fixed Networks)』『クラウド/ネットワークサービス(Cloud and Network Services)』『ノキアテクノロジーズ(Nokia Technologies)』の4部門の再編を進めている。また、今後4つのコーポレートファンクション部門を展開することにより、戦略企画や、ノキアベル研究所を含む長期研究、ITおよびデジタル化などに注力していく考えだ」と述べている。
同社のモバイルネットワークス部門は、同社の売上高全体の約半分を占めているが、特に5G RAN事業における利益を確保するよう厳しいプレッシャーをかけられていることから、同部門の責任者を務めるTommy Uitto氏は今後、最大の課題に直面することになるだろう。
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