勢力図が変わり始めたRAN市場:Samsungが台頭(2/2 ページ)
モバイル通信市場の中でも、特にRAN(Radio Access Network)市場は、これまで長期間にわたり、比較的動きの遅い複雑な分野であるとされてきた。しかし今や、その状況は全く変わってしまった。ここ最近で、大きな動きがいくつもあったからだ。
Huaweiを除外する国が増えている
Huaweiについては、欧州やその他の地域の多くの通信事業者によるHuaweiの5G移動通信機器を排除する動きは、日を追うごとに強まっている。この半月ほどで、ベルギーとイタリア、スロベニア、ブルガリアの通信事業者が、英国やスウェーデン、フィンランドなどの大国に倣って、Huaweiからの機器購入を停止している。
安全保障上の懸念と米国政権からの圧力を受けて、Huaweiの排除を最初に決定したのは英国だった。
欧州で間違いなく最も戦略的な市場であるドイツではこれまでのところ、Huaweiの通信機器の使用を禁止してはいない。しかし、ドイツ政府は、ネットワークのコア部分とRANの両方に関して、携帯電話事業者が中国のZTEやHuaweiなどのいわゆる“ハイリスク”ベンダーから調達できる品目について、新たに厳格に監視すると断言している。
Deutsche Telekomは、4G/LTEネットワークの多くをHuaweiに大きく依存しているため、Huawei製品の禁止の影響を最も大きく受ける事業者の一つである。Deutsche TelekomをはじめとするEUの通信事業者は、英国と同様に、Huaweiの機器を取り除いてNokiaやEricssonなど、他のプロバイダーの機器に置き換えることを余儀なくされる可能性がある。
一方、Huaweiにとって3Gおよび4G機器の巨大市場であるインドとの貿易関係は、安全保障上の懸念によって緊張感を帯びており、両国間の国境紛争によって事態はさらに悪化している。広大な国土全体に次世代セルラー技術を展開し、野心的なデジタル化戦略を達成するという意欲的な計画を達成するために、インドは比較的安価なインフラ機器に大きく依存しており、これまでのところ、Huaweiがそれを可能にしてきた。だが、こうした現実にもかかわらず、インド・中国間の緊張が、インドの5G計画の見直しにつながると予想される。
急成長しているインドの通信事業者であるJio Platformsは、自社のネットワークにSamsungの機器を採用しているが、5Gに関してもSamsungの技術を選択すると表明している。ただし、インドは現在、5Gの初めての周波数オークションに向けてルールの策定に取り組んでいる(2021年半ばに完成予定)ため、状況が変わる可能性がある。
オーストラリアは2018年後半に初めてHuaweiの機器に対して使用禁止令を課した。カナダの通信事業者TelusとBell Canadaは5Gネットワークの展開に向けて協力することで合意し、コアとRANいずれについてもEricsson製およびNokia製を選択し、Huaweiを除外することにした。
SamsungやNECも重要な契約を獲得
そして、EricssonとNokiaという北欧2社のみならず、SamsungやNECも、特にRAN関連の機器で重要な契約を勝ち取っている。Samsungは、Verizon以外にもAT&TやSprint、KDDI、ニュージーランドのSparkといった通信事業者と4Gや5Gの契約を獲得している。Dell'Oroの最近のレポートによると、無線ネットワーク市場におけるSamsungのシェアは過去2年間で2倍となる3%となった。5Gのみに限ると、Samsungの2020年のシェアは5〜10%になるとDell'Oroは予測している。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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