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ビットコインの運命 〜異常な価値上昇を求められる“半減期”踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(8)ブロックチェーン(2)(7/10 ページ)

「ブロックチェーン」を理解するために「ビットコイン」の解説を続けます。今回の前半はビットコインの“信用”について取り上げます。後半は、ビットコインに組み込まれている「半減期」という仕組みを解説します。これは、“旗取りゲーム”による賞金が、約4年単位で半分になること。ここに人間の力が介在する余地はなく、言ってみればビットコインの“逃れられない運命”なのです。

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「正気」で続けるたった一つのシナリオ

 ところが、これを正気で続けるシナリオが一つだけあるのです ―― ビットコインのレートが、無限に上がり続けることです。

 簡単に言えば、ビットコインの発行量を半分に抑え込まれたとしても、ビットコインの法定通貨とのレートが2倍になればトントン。それ以上なら、このゲームを続けていても「もうかります」。

 加えて、レートが上がれば、既に所有しているビットコインの価値も雪だるま的に上がるので、ビットコインを所有しているだけで、どんどんお金持ちになっていきます。

 もうお分かりかと思いますが、そんな状況の中にあれば、ビットコインを貨幣として流通させて、支払いに使う奴は、はっきりいって阿呆です。ほっといても価格の上がるものが、財布の中に入っているのに、それを他人にくれてやって、どうするというのでしょうか?

 つまり、今のビットコインは、「便利な支払いの道具として使いたい」という私の願いの真逆の「投機物件」に成り下がっているのです ―― 誰も手放さそうとせず、それ故、市場に流通せず、ビットコインを取り扱える店舗を、ネットで探さなければ見つけることすらできないという、現状の歪(いびつ)なビットコインの流通市場が完成する ―― というわけです。

 では、ビットコインのマイニングで、現時点の1BTCあたり120万円の利益を確保し続けるためには、今後、ビットコインのレートがどの程度上がり続けなければならないのでしょうか。簡単なプログラムを書いてシミュレーションをしてみました*)

*)現在C/C++言語からGo言語へ乗り換え中です。

package main
import "fmt"
func main() {
	reward := 50.0
	total_bc_issued := 0.0
	passed_year := 2009.0
	next_year := 2009
	for i := 1; i < 21000001; i++ { //2100万ブロックで終了
		if i%210000 == 0 { //21万ブロック単位で報酬が半分になる
			reward /= 2.0
		}
		if int(passed_year) == next_year {
			next_year++
			//fmt.Printf("reward = %.8f total_bc_issed = %.8f passed_year = %.1f\n", reward, total_bc_issued, passed_year)
			//fmt.Printf("%.8f,%.8f,%.1f\n", reward, total_bc_issued, passed_year)
		}
		total_bc_issued += reward                   // 報酬の加算
		passed_year += 9.6 / 60.0 / 24.0 / 365.2422 //9.6分に一回発行 1年を365.2422日として計算
		if i%1000 == 0 { //1000ブロック単位でデータ表示
			fmt.Printf("%.3f,%.8f,%.8f\n", passed_year, reward, total_bc_issued)
		}
	}
}

 まず、計算結果と、2009年からのビットコインの半減期の時間などから、パラメータチューニングを行ってみました。

 計算結果からでは、10分に1ブロックのマイニング(1回の旗取りゲーム)が完了しているとされていましたが、実際には、平均9.6分ぐらいのようです。

 また、21万ブロックで半減期が発動することから考えて、100回の半減期が、2408年(388年後)まで続くように思えますが、実際には、ビットコインの最小単位1Satoshi=0.00000001BTCが桁落ちしてしまう日が、119年後の2139年の3月24日となりました。

 この日(ラストデー)から先、ビットコインのマイニングは行われなくなりますが ―― まあ正直、そのへんは、皆さんにとっても私にとっても、どーでもいい世界です(とっくに、私たちは「鬼籍の人」です)。

 まあ、このどーでもいい世界でも、ビットコインが動き続けているとしたらどうなるかの計算を続けてみたんですが、なかなか凄いことになっています。

 現時点において、「現状の”1BTC=120万円”のマイニング利益を得る」ためには、マイニングの最後の年である2139年に、1BTC=750兆円に値上がりしていなければなりません(シミュレーション結果のデータはこちらです)。

 さすがに、119年後のことを考えても現実的ではないので、現在から20年間、2040年までのシミュレーションをしてみたのですが、これでも、かなり凄いことになっています。

 現在のビットコインは、3.83年で半減期を迎えますので、常に値上がりし続けなければ、マイニングは今と同程度の利益を確保できません。

 年率19.8%で成長を続けなれければ、ビットコインのマイニングビジネスを現状のレベルでは維持できません。これはビットコインの半減期を使えば、以下の計算で簡単に算出できます。

 そんな成長を、あと119年間も続けなければならないなんて無茶です。20年間に限定しても、無理でしょう。

 ちなみに普通の株式や通貨では、こういう計算はできません。株式や通貨の流入量は、様々な景気判断の後、企業や日銀関係者の判断によって調整が行われるからです。

 しかし、コンピュータのアルゴリズムであるビットコインには、そのような人間的な恣意が介在する余地はありません。世界の景気がどうなろうとも、半減期は、21万ブロック単位、3.83年ごとに確実にやってきます。それゆえ、ビットコインは必ず年率19.8%で、ビットコインの価値を増やし続けなければならない運命にあるのです。

 いずれにしても、ビットコインの「マイニング(旗取りゲーム)」に明け暮れている人や、ビットコインを大量に保有している人にとって、このビットコインフェスティバルは、終了させることのできないイベントなのです。

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