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ビットコインの運命 〜異常な価値上昇を求められる“半減期”踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(8)ブロックチェーン(2)(8/10 ページ)

「ブロックチェーン」を理解するために「ビットコイン」の解説を続けます。今回の前半はビットコインの“信用”について取り上げます。後半は、ビットコインに組み込まれている「半減期」という仕組みを解説します。これは、“旗取りゲーム”による賞金が、約4年単位で半分になること。ここに人間の力が介在する余地はなく、言ってみればビットコインの“逃れられない運命”なのです。

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うっすらと見えてきた、ビットコインの需要

 ビットコインは2100万BTCという発行制限が定められているため、そのレートは需要によって決定されることになります。需要が増えれば、当然にレートは上昇することになります。つまりビットコインは、その性質上、レートが上がりやすい、とも言える訳で、実際にそうなっています(というか、恐ろしく不安定という感じです)。

 ただ分からないのは、ここで言う「需要」とは何か、ということです。

 普通「需要」と言えば、市場での貨幣の使用のニーズとなりますが、何度も説明している通り、ビットコインで決済できる店舗(実世界もインターネットも)を、私は知りません。

 最近は町内の小売店舗の入る度にチェックしています。また少なくとも、AmazonやMonotaroでの支払いはできないし、楽天はビットコイン自体の購入や交換はできるけど、ビットコインを使った支払いはできないことを、自分のポータルサイトから確認しました。

 とすれば、残りは、「投機のための『投機需要』」という、実に不吉なものが見えてきます ―― が、これは次回以降にお話したいと思います。

「2139年」付近では何が起こるの?

 では、2100BTCが全部出揃った、2139年3月24日(江端試算)の直前と直後に何が起こるのか ―― これを考えると、結構怖いです。

 下記の表は、私が思いついたことを書き出したものです。

 2139年3月24日のラストデーを迎えると、マイニングに対して新しいコインが発行されません。もちろん、それ以降もブロックチェーンを追加され続けることで、 ビットコインのサービスは継続することができますが、「コンピュータを回し続けるだけでお金儲けできる*)」ビジネスは終了です。

*)毎日壊れ続けるコンピュータを入れ替えて、電力を安定に供給して、マイニングシステムを安定稼働させ続けるその作業(特に運用面)が、ラクではないことは知っています。

 ビットコインは得られない、電気料金はかさむ、コンピュータは壊れ続ける ―― そんな中で、マイナーの設備を稼働し続けるモチベーションがあるでしょうか ―― いや、ない

 彼らが業務を撤収したらどうなるか ―― ビットコインの送金は、ブロックチェーンを作る作業なくして行うことはできません。マイナーが事業から撤収したら、ビットコインの取引は破綻します。仮に全部のマイナーが撤収しなくとも、取引に必要なブロックの生成は10分間(私の試算では9.6分間)から、もっと遅延することになるかもしれません(例えば10日間とか)。

 そんな取引サービスを誰が使い続けるでしょうか? そして使い道のなくなった2100万のビットコインは、通貨として使えないまま死蔵し、やがて、ビットコインの大暴落と同時に、システムが完全に破綻に至る ―― これは、ビットコインのシステムを普通に考えれば、普通に出てくる、普通の解です。

 2139年3月24日(江端試算)後に、もしビットコインシステムが破綻してしまうのであれば、破綻の前倒し連鎖が発生するかもしれません。『どうせ破綻するシステムの仮想通貨を持っていてもしょうがない』が、2139年から、どれくらい前まで遡行してくるか ―― これが問題です。

 10年か、20年か、あるいは、100年遡ってくるかもしれません。100年前まで遡ってくれば、119年(現在)まで遡るのも同じことです。

 「現時点で、発行スケジュールが確定してしまい、発行量に上限のあるビットコインには未来はない」「それならば、別の仮想通貨に乗り換えてしまおう」というモチベーションが発生しても不思議ではありません。その日は、「今日」かもしれません。

 ビットコインは、現時点から未来を俯瞰できる、稀有なシステムであり、それ故に、ユーザに大きな安心を与えていることは間違いありません。しかし、同時に確定した未来は、「普通なら考えなくて良いことまで考えることができてしまう」という、負の要素があるのも事実なのです。



 ちょっと怖い話をしすぎました。

 実際のところは、発行量が上限の2100万ビットコインに達した後は、利用者が支払う取引手数料をマイナーが受け取れることでインセンティブになる、という仕組みが組込まれています ―― ビットコインというものは、私程度の人間の考えることには、既に先行して答を出していて、本当にすごいと思います。

 ただそれでも、実際にこれでシステムの維持ができるかは、そのラストデー以降になってみないと分からないのも事実です。

 その他の解としては ―― 「それを言ったらおしまいよ」という感もありますが ―― ビットコインの発行の上限を取り払って、現在のようにマイナーが業務を継続し続けるように、アルゴリズムを変更してしまうという「禁じ手」もありえます。

 あるいは、国家や企業が、直接、マイニングに介入してくるという未来も ―― もう、それはビットコインと呼べるものではない何かになってしまいますが ―― そういう未来もあると思います(イーサリアムのハードフォークのように)。

「小市民的ビットコイン」への回帰

 私としては、ビットコインを投機対象とする現在の仕組みを、今から少しずつ改めて、本来あるべき「通貨としてのビットコイン」にシフトしていくことを期待しています。

 マイニングは立ち上げっぱなしのPCが、勝手に参入し、運が良ければ、一日100円程度のお金が手に入る、というような、高性能のゲーミングPCの余った計算能力を、ささやかな小金稼ぎに使うような、そういう

 ―― “神田川”、“下宿”、“3畳1間”のような、小市民的なビットコインへの回帰(?)

が実現されるといいなぁ、と思っているのです。

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