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「全てをMade in Chinaに」は正しい戦略なのか?専門家が警鐘を鳴らす(1/4 ページ)

中国 清華大学の教授であり、中国半導体産業協会(CSIA:China Semiconductor Industry Association)の半導体設計部門担当チェアマンを務めるWei Shaojun氏は、2020年11月5〜6日に中国・深センで開催した「Global CEO Summit 2020」で基調講演に登壇し、『全てをメイドインチャイナに(All Made in China)』という戦略は、果たして正しい選択なのだろうか」とする疑問を投げかけた。

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「All Made in China」に疑問を呈する

 中国 清華大学の教授であり、中国半導体産業協会(CSIA:China Semiconductor Industry Association)の半導体設計部門担当チェアマンを務めるWei Shaojun氏は、米国EE Timesを運営するAspencoreが2020年11月5〜6日に中国・深センで開催した「Global CEO Summit 2020」において、基調講演に登壇し、「現在のような騒然とした経済状況の中、『全てをメイドインチャイナに(All Made in China)』という戦略は、果たして正しい選択なのだろうか」とする疑問を投げかけた。


「Global CEO Summit 2020」の基調講演に登壇したWei Shaojun氏

 中国と米国の貿易戦争が悪化の一途をたどる中、中国国内の半導体メーカーの間ではここ数カ月間で、「全てをメイドインチャイナに」というスローガンが広まるようになった。「設計から製造、供給に至る全ての段階を、海外の技術や製品、サプライヤーなどにほとんど頼ることなく、中国国内で完結させることに注力していく」とする中国半導体メーカーの決意が示されている。

 Wei氏は、今回の講演の中で、「『全てをメイドインチャイナに』という考え方がかなり普及しているが、やや過熱気味ではないだろうか」と警鐘を鳴らしている。

 半導体業界が現在、国内外で困難な環境に置かれているという点を考慮すると、中国は語気を和らげて、戦略的代替案を模索することにより、国内の巨大市場と、優れた既存の土台とをうまく活用できるようにすべきではないだろうか。中国が目指すべき目標は、今後5〜10年間でより大きな進展を遂げられるようにすることである。

 習近平国家主席は、2018年6月に開催された「Central Foreign Affairs Working Conference(中央外事工作会議)」において、「中国は現在、1世紀に一度の重大な変化に直面している」と初めて言及した。

 「1世紀に一度の重大な変化」という表現が具体的に何を指しているのかという点については、さまざまな見解があるが、その共通要素は、「科学技術の開発進展によって、重要な変化が引き起こされている」ということのようだ。重要なのは、このような前例のない変化には、膨大な不確定要素を伴う多大な影響力があるということを理解することである。

 Wei氏は、今回のGlobal CEO Summitにおいて、「過去50年間の世界GDP成長」に関するグラフを提示した。データ分析によれば、1970〜2001年の31年間の累積GDPは568兆3000億米ドルで、年平均では18兆3000億米ドルだった。さらに、2001〜2019年の19年間の世界GDPは1172兆5000億米ドル、年平均では65兆1000億米ドルとなり、その前の31年間と比べると3.6倍に増加している。

 なぜ世界GDPは、約20年間でこのような高成長を遂げたのだろうか。その要因は、石油や石炭、輸送、農業などだろうか。

 そのいずれでもない。

 2000年以降、インターネット技術やモバイル通信技術の他、特にその2つを組み合わせたモバイルインターネット技術の登場によって、世界は徐々に統合の方向へと進み、世界経済が急激に発展することになった。過去20年で最も速い成長を遂げたのは、まぎれもなくIT分野である。

 別のデータを見てみよう。1987年〜2001年の15年間で、世界半導体市場の累計売上高は5兆2213億米ドルに達した。1年当たりの平均売上高は2901億米ドルで、これはその前の15年間に比べて2.9倍になる。

 GDPと半導体産業の成長には強い相関関係があるのだ。これは半導体がIT分野を支えているからに他ならない。

 同じことが今の中国にも言える。中国の過去20年における急速な経済成長も、やはりIT分野の成長からきているのだ。

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