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「全てをMade in Chinaに」は正しい戦略なのか?専門家が警鐘を鳴らす(3/4 ページ)

中国 清華大学の教授であり、中国半導体産業協会(CSIA:China Semiconductor Industry Association)の半導体設計部門担当チェアマンを務めるWei Shaojun氏は、2020年11月5〜6日に中国・深センで開催した「Global CEO Summit 2020」で基調講演に登壇し、『全てをメイドインチャイナに(All Made in China)』という戦略は、果たして正しい選択なのだろうか」とする疑問を投げかけた。

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米中ハイテク戦争で力を失うのは米国

 米国半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)が発表したデータによると、米国半導体メーカーが2018年に中国国内で販売したIC製品の売上高は、1000億米ドルを上回り、多くの米国メーカーにとって、自社の売上高全体の約半分を中国向け製品が占めていたという。中国と米国が技術面で分裂するとなると、米国の半導体メーカーにとって何のメリットもないのは明らかだ。同時に、米国の半導体市場におけるリーダーシップにも多大な影響が及ぶことになる。このため、SIAや多くの米国半導体メーカーは、中国との分裂を進める米国政府の動きに対し、反対の声を上げている。

 Boston Consulting GroupがSIAに提出したレポートによると、もし米国が2018年に、中国に対して意図的な制裁措置を課していなければ、米国半導体メーカーの世界市場シェアは48%に達し、世界売上高は約2260億米ドル、研究開発投資費も400億米ドルの見込みだったという。

 だが、「中国製造2025」政策の計画によると、中国と米国の技術デカップリングが徐々に進むことにより、中国は米国サプライヤー全体の15〜40%を置き換えることになるという。これにより、米国半導体メーカーの世界売上高は、2050〜2200億米ドルに減少する見込みだ。さらに、世界市場シェアは43〜46%に縮小し、売上高の減少によって研究開発投資費も減少するとみられる。

 もし米中間で完全に技術が分裂した場合、米国半導体メーカーの世界売上高は、さらに1430億米ドルまで減少し、世界市場シェアも30%まで縮小する見込みだという。研究開発費も、160億〜280億米ドルに減少するとみられる。米国の半導体市場におけるリーダー的地位は大きく揺らぎ、韓国の半導体業界に追い越されるだろう。そして長期的には、中国にも取って代わられることになる。


Gartnerなどの調査レポートを基にBCGが行った分析結果。2018年の米国半導体売上高や市場シェア、R&D金額をベースに、デカップリングが起こった際の影響を試算した。これによると、米中デカップリングでは、米国がより大きな影響を受けることになる 出典:BCG(クリックで拡大)

 Wei氏は、「中国は既に、IT産業分野において、比較的順調に軌道に乗っている」と主張する。同氏は業界全体を、インターネット、モバイル通信、AI、自動運転、量子技術、ICの分野に分類。中国、米国、欧州、日本、韓国、インドにおける各分野の開発状況を比較した表を示した。スマイルマークは開発が順調に進んでいることを示し、泣き顔マークは開発がうまく進んでいない(あるいは遅れている)ことを示している。もちろん、これは6つの国/地域だけを比較したときの相対的な評価である。


インターネット、モバイル通信、AI、自動運転、量子技術、ICの分野における、6つの国と地域の開発状況

 この表を見ると、中国と米国はほとんどがスマイルマークで、多くの分野において開発が順調に進んでいることが見て取れる。これは、中国が2000年以降に大規模な情報技術開発を進めてきたこととに大いに関係している。

 Wei氏は、「もちろん、中国と米国にもそれぞれ欠点はある。米国は、モバイル通信ネットワーク市場では中国ほど優れた成果を上げられていないが、半導体分野では中国よりもはるかに好調だ。一方で、中国としては好ましい方向に進んでいるため、何も混乱するようなことはない」との見解を述べている。

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