検索
連載

半導体市況分析手法を新型コロナ感染動向の分析に応用してみた大山聡の業界スコープ(37)(1/3 ページ)

2020年も年末に差し掛かったこの時期、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が拡大し始めている。厚生労働省から発表される数字を見ていると、数字の動向に何らかの傾向があるように思えた。そこで、半導体市況の分析手法を使ってCOVID-19感染動向の数字を分析してみた。

Share
Tweet
LINE
Hatena
連載アイコン
>>>連載一覧はアイコンをクリック<<<

 2020年も年末に差し掛かったこの時期、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が拡大し始めている。もともと秋冬には感染拡大が懸念されていただけに、緊急事態宣言は発しないのか、Go Toキャンペーンは続けるのか、現状のままで年末年始を無事に迎えられるのか、誰もが心配する事態に陥ってしまった。筆者はこの分野は完全な専門外ではあるが、厚生労働省から発表される数字を見ていると、数字の動向に何らかの傾向があるように思えた。そこで、半導体市況の分析手法を使ってCOVID-19感染動向の数字を分析してみた。

 厚生労働省のホームページでは、わが国におけるCOVID-19に関するオープンデータとして、陽性者数、PCR検査実施人数、入院治療などを要する者の数、退院または療養解除となった者の数、死亡者数などが公表されている(参考:オープンデータ/厚生労働省)。

 専門家の意見を聞いていると、

  • 「PCR検査数には限界があるからすべての感染者数は把握できない」
  • 「曜日によって検査数は異なる」
  • 「PCR検査には擬陽性・偽陰性が一定数含まれる」
  • 「だから公表された感染者数の増減をみて一喜一憂すべきではない」

などと言われている。

 ただ、PCR検査数をできるだけ増やすことで感染者がどれくらいいるのか、これを確認しなければ感染状況が分からないのは事実なので、公表されている数字を筆者なりに加工しながら眺めてみることにした。

陽性者数と陽性率をグラフ化

 まず、PCR検査数は曜日によって異なるようなので、公表される検査数および、陽性者数の生数字に7日移動平均の加工を行い、曜日による変動を排除してみた。その上で陽性者数と陽性率(陽性者数÷PCR検査数)をグラフ化したのが下図である。


陽性者数と陽性率の推移 出典:厚生労働省のデータを基にGrossberg作成

 2020年4月7日、安倍晋三首相(当時)は緊急事態宣言を発出しているが、当時はPCR検査数を増やすことができず、必然的に陽性率が高くなってしまっている状況が伺える。

 5月に入って陽性率が下がり、緊急事態宣言も段階的に解除することができたが、6月下旬から感染者数は再び増加する。第1波のピークより高い「第2波」が来ていたのは明らかだ。ただし、PCR検査体制を含め、医療体制が第1波の時ほどひっ迫していない、という判断で緊急事態宣言は発出されなかった。幸い、8月から感染者数も陽性率も減少していた。「7月22日からGo Toトラベルキャンペーンを開始したのは早すぎたのではないか」「10月からは東京もキャンペーンの対象になったが、これが感染拡大の引き金になっていないか」と言われるようになったのは、11月以降の感染者数が急増してからである。

 感染は抑えたいが経済活動を止めたくない、という二律背反の葛藤が政府の判断を迷わせているようだが、年末年始に向けての現実的な目標をどこに設定すべきか、筆者なりに分析してみた。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る