検索
連載

半導体市況分析手法を新型コロナ感染動向の分析に応用してみた大山聡の業界スコープ(37)(2/3 ページ)

2020年も年末に差し掛かったこの時期、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が拡大し始めている。厚生労働省から発表される数字を見ていると、数字の動向に何らかの傾向があるように思えた。そこで、半導体市況の分析手法を使ってCOVID-19感染動向の数字を分析してみた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

第1波の「感染者数と感染の増減」と「新規感染者増減率と陽性率」を分析

 第1波時の感染者数(横軸)と感染の増減(縦軸)をグラフ化したのが下図である。3月1日は新規感染者が16人、感染者増減率(1週間前との比較)が33%からスタートしており、増減率が50%から200%の間を往復しながら、3月末には新規感染者138人、増減率214%(前週比で3倍)となって4月に移行する。4月は増減率こそ順調に減少するものの、新規感染者は560人に達しており、正体の知れないCOVID-19に対して警戒心を強めた政府が緊急事態宣言を発出した。その甲斐があったのか、4月19日には増減率がマイナスに転じ、4月末には新規感染者も300人を下回った。5月は順調に新規感染者が減少しており、緊急事態宣言も解除されたのだが、5月下旬になると増減率が上昇し始める。そして6月末には新規感染者が100人を超えてしまう。状況としては3月時点と似ているが、すでに述べたようにPCR検査体制を含め、医療体制が第1波の時ほどひっ迫していない、という違いがあった。


第1波時の感染者数(横軸)と感染の増減(縦軸) 出典:厚生労働省のデータを基にGrossberg作成

 3月と6月の状況の違いを確認するために、新規感染者増減率(横軸)と陽性率(縦軸)をグラフ化したのが下図である。3月1日は増減率33%、陽性率12.6%でスタートしている。その後、グラフが上下左右に乱れながら推移しており、検査数が少なくて陽性率がバラついている実態を反映しているようだ。4月に入ると増減率は減少するものの、陽性率が10%を超えたまま推移しており、政府としては緊急事態宣言を発出し、医療体制の強化施策に腐心していたことが推察される。5月には陽性率が順調に下落し、6月は増減率が増えているにもかかわらず陽性率が2%前後に維持されている。陽性率だけで医療体制への安心感を求めることはできないが、必要なPCR検査が十分にできなかった3月とは明らかに状況が異なる様子が伺える。


3〜6月における新規感染者増減率(横軸)と陽性率(縦軸) 出典:厚生労働省のデータを基にGrossberg作成

第2波 ――Go To施策は正しかったのか?

 次に、第2波の時の感染者数と感染の増減をグラフ化したのが下図である。6月の動向はすでに述べた通りで、7月に入り増減率こそ減少傾向だったが、前週比50%増を上回る状態が続き、7月末には感染者数が1000人を超えてしまう。にもかかわらず政府は7月22日からGo Toトラベルキャンペーンを開始した。8月の新規感染者数が1000人を超えたまま推移していたことを考えると、果たしてGo Toトラベルキャンペーンを開始して良かったのだろうか、という疑問が残る。それでも8月後半には増減率がマイナスとなり、新規感染者も700人を下回ったことで、Go To施策の強行は事なきを得たようにみえる。9月は新規感染者が400人を下回ることなく増減率がプラスに転じてしまう。経済を回すためにGo Toキャンペーンが効果的だったことは理解できる。だが、9月に感染者数が十分に減らなかったのはGo Toのせいではないか、この状況下で対象から除外されていた東京都を10月から対象に拡大して良ったのだろうか。グラフを眺めていると、大きな疑問を抱かざるを得ない。


第2波時の感染者数(横軸)と感染の増減(縦軸) 出典:厚生労働省のデータを基にGrossberg作成

 同じ時期について、新規感染者数と陽性率をグラフ化してみると(下図)、6月から9月までの4カ月間で、陽性率が7%以内にほぼ収まっている点は、第1波の時と大きく異なっている。陽性率は7月に上昇したものの、8月、9月と下がり続け、9月末には1.7%に落ち着いている。ここまで下がれば大丈夫、という基準があるわけではないが、ポジティブに評価できる指標ではあるだろう。


6〜9月における新規感染者増減率(横軸)と陽性率(縦軸) 出典:厚生労働省のデータを基にGrossberg作成

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る