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「1+1=3を実現する」、Samsungの投資戦略ベンチャーキャピタルが活況(1/2 ページ)

米国EE Timesは、Samsung Catalyst Fundでシニアバイスプレジデント兼マネージングディレクターを務めるShankar Chandran氏にインタビューを行い、Samsung Catalyst Fundの投資戦略を聞いた。

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ベンチャーキャピタルビジネスが活況


画像はイメージです

 Samsung Catalyst Fundでシニアバイスプレジデント兼マネージングディレクターを務めるShankar Chandran氏は、「ベンチャーキャピタルファンドはさまざまな新興企業に投資しているが、その投資先企業が倒産するという可能性は避けられない。もちろんコーポレートベンチャーファンドも、同じリスクに直面しているが、他とは異なる問題が生じる場合がある。それは、投資した新興企業が、非常に大きな成功を収めた場合に、より良い選択肢として他の企業と提携する可能性があるということだ。さらに、資金提供した新興企業に拒絶されることよりももっと悪い問題が起こり得る」と述べる。

 現在、ベンチャーキャピタルビジネスが活況だ。投資ファンドの数は増加の一途をたどり、驚くほど巨額の資金プールが運用されている。

 しかし、状況が次第に手に負えなくなってきていることを示す兆候が、いくつかみられるようだ。一部のファンドは、優れた投資先を見つけるだけでは不十分なため、ユニコーン企業(企業価値が10億米ドル以上で、非上場の民間新興企業)を探し出す必要があるという。このようなユニコーン企業をめぐる発掘競争の中で、一部の投資企業は、巨額の資金を投じることで、投資規模そのものによって、十分に自己達成的予言を生み出すことができると期待しているようだ。ユニコーン企業を見つけることができるという評価を得ることは、ROI(Return On Investment:投資利益率)と同じくらいの価値があるのだろう。

 米国EE Timesが今回Chandran氏にインタビューを行う少し前に、The New York Timesがベンチャー投資関連の記事を掲載している。「This Is Insanity’: Start-Ups End Year in a Deal Frenzy(狂気の沙汰:新興企業にとって2020年は狂乱的契約の年に)」と題するこの記事は、一部のベンチャーキャピタルが、完全に捨て身状態とまでは言わなくとも、見境なく投資を行うようになってきたことについて取り上げている。これによると、複数の新興企業の創設者たちが、「自分たちにとって必ずしも必要ではなく、欲しいのかどうかも分からないような資金を、投資家たちから受け取ってほしいと頼まれることがあり、非常に驚いている」と語ったという。

 The New York Timesの記事の中でも特に注目すべきは、以下の部分だ。

 「起業家であるRahul Vohra氏は、新興企業のサポートも手掛けている。同氏によると、企業の情報を集めて、投資のための調査(デューデリジェンス)を行い、契約に調印して、電信送金するという全ての作業を、1日で実施することが度々あるという」

 デューデリジェンスが1日で完了するということは、常識的に考えればまずあり得ない。


Samsung Catalyst FundのShankar Chandran氏

 Chandran氏は、「これに比べたら、Samsung Catalyst Fundの対応ははるかに慎重だと言える。当社の担当チームは毎年、約2000社の企業と話し合い、その中から実際に投資する企業を十数社から二十数社に絞る。1カ月当たりでは2社程度だ」と述べる。

 同氏によると、Samsung Catalyst Fundは現在、約60社のポートフォリオ企業を持っているという。

 その中には、AImotive(自動運転車向けAI)や、Apton Biosystems(低コストの遺伝子配列解明技術)、Avicena(光電子工学チップレットインターコネクト )、Blaize(AI)、Fungible(データセンター向けに特化されていない半導体チップ、ソフトウェア同梱)、Sensifree(医療市場向けセンサー)などの企業がある。全ての企業リストを見ると、全般的にAI分野への関心があることや、自動車やデータセンター、医療などの特定のターゲット市場にも注力していることなどが分かる。

 ベンチャーファンドの成功を測る基準の一つとして挙げられるのが、投資の結末だ。Samsung Catalyst Fundの最近の成果としては、Habana Labs(Intelが買収)や、Datrium(VMWareが買収)、BabbleLabs(Cisco Systemsが買収)、Ring(Amazonが買収)などが挙げられる。

 この他にも、Samsung Catalyst Fundが自負する成功事例として、Banking as a Service(BaaS:サービスとしてのバンキング)プラットフォームを実現したSolarisbankがある。同社とSamsung Electronicsは2020年9月に、Visaとの協業を発表し、ドイツ国内で「Samsung Pay」を展開していく予定だという。

 Chandran氏は、これまでSamsung Catalyst Fundに7年間勤務してきた。同氏は、金属学と材料科学、ビジネスの学位を取得しており、もともとはApplied Materialsに勤務していたが、約18年前にベンチャー投資に移籍して、Samsung Catalyst Fundに入る以前はPanorama CapitalやJP Morgan Partnersなどで実績を培ったという。

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