半導体市場、2020年は落ち込むも2021年は力強く成長:Yole Developpement(2/2 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが世界中に広まって1年以上が経過した。COVID-19は、200万人以上の死と終わりの見えない経済的ダメージをもたらし、半導体産業のエンドマーケットも世界的に大きな影響を受けた。半導体産業の経済活動と同市場が回復するのにどれくらいの時間がかかるのだろうか。
データセンターや通信は好調
他の分野を見てみると、電気通信や医療分野はそれほど困難な状況にはないようだ。電気通信事業者は2021年に、引き続き5G(第5世代移動通信)の導入を加速していくだろう。また、中国は現在も、5G展開によって経済を強化するための取り組みを強力に推進しているところだ。米国との貿易戦争の問題を抱えている中国にとって、こうした取り組みは非常に重要な戦略だといえる。実際に中国は、5G市場におけるサービスやインフラなどの分野で、他の国々と比べて2年ほど先を行っているという状況にある。
データセンターも、うまく困難を乗り切っているようだ。メディアストリーミングや在宅勤務などの増加や、サプライチェーン崩壊に備えた防衛手段としての在庫積み増しが発生したことなどにより、2020年前半には、予想を上回る強い需要が生み出された。また、COVID-19に直接関連する医療分野では、換気装置や呼吸器診断装置、ウイルス研究関連ツール、患者監視装置などがプラス成長を達成しているが、その他のヘルスケア分野では、それほど大きな影響はみられなかった。
さらに高いレベルでは、データセンターやネットワークシステムの需要が、主に5GやAI、HPC(High Performance Computing)などのアプリケーションによってけん引され、成長率約2%で伸びると予測されている。良いニュースとしては、これらの市場では今後、半導体ハードウェアの需要がさらに急速な成長を遂げる見込みだという点がある。これは、システム1台当たりに搭載される半導体チップの数が増加していくためだ。
世界半導体市場は2017年から2年連続で高い成長を遂げた後、2019年には前年比12%減となる4120億米ドルとなった。このように減少に転じた要因としては、製品価格の循環や、スマートフォン需要の鈍化、世界貿易の混乱などが挙げられる。米国半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)によると、年間売上高は世界全体で減少しており、欧州が前年比−7.3%、中国が−8.7%、アジア太平洋地域/その他が−9.0%、日本が−10.0%、南北アメリカが−23.8%となっている。
一方で半導体業界は2021年には力強く回復し、前年比15%増になると予測されている。長期的な成長をけん引していく重要な要素としては、現在とほとんど変わらず、AIや5G、HPC、スマートオートモーティブ、IoT/IIoT(産業用IoT)、ハイパースケールデータセンター、Industry 4.0などが挙げられる。コンシューマーやモバイル、自動車、インフラ、医療、工業など、さまざまな分野全体を成長させていくだろう。
筆者紹介
Eric Mounier氏:Yole Développementのフェローアナリスト。半導体業界を25年以上、ウォッチしている。
Guillaume Assogba氏:Yole Développementのエコノミスト。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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