「ブロックチェーン」に永遠の愛を誓う 〜神も法もかなわぬ無敵の与信システム:踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(11)ブロックチェーン(5)(2/7 ページ)
今回は、ブロックチェーンについて“技術用語を使わずに”説明してみました。さらに、ブロックチェーンを使用するアプリケーションとして、「借家システム」「ブロックチェーン投票」「ブロックチェーン婚」を紹介します。
“全てが偽物の台帳”であるブロックチェーン
さて、それではブロックチェーンの解説を始めたいと思います。
ブロックチェーンとは一言で言えば「台帳」です。しかも、「本物の台帳」は世界のどこにも一つとしてなく、全てが「偽物の台帳」であるという、ものすごい割り切り方をします。
台帳は、世界中の複数の人間にバラバラに管理されていて、かつ、「本物」はありません。そして、たった一つだけルールを決めておきます。
―― 複数の台帳が手元にあったら、一番厚い台帳だけを残して、残りの台帳は全て捨てる
これだけです。
人生における「長いものに巻かれろ」という処世訓、領土問題における「実効占拠」、そして、某国の元大統領が実施し続けた、証拠が添付されていない*)「盗まれた選挙」の主張の繰り返しこそが、ブロックチェーンの本質です。
*)証拠の提示のない訴訟は、審理に入る以前に”却下”(訴えの内容を審理せずに門前払い)されます。”却下”と”棄却”は全然意味が違います。興味のある人は調べてみてください。
ちなみに、ナチス・ドイツの宣伝大臣であったヨーゼフ・ゲッベルスの有名なセリフで「うそも百回言えば真実となる」という言葉は、真偽が不明(出典がない)らしいのです。しかし、これが世界で100回以上引用されたことで、世界中の人が「ゲッペルスがそう言ったと信じている」ことになっています ―― これが、「人工信用*)」であるブロックチェーンの機能と言えます。
*)「人工信用」については、「日本最高峰のブロックチェーンは、世界最長を誇るあのシステムだった」をご参照ください。
次に、台帳のベージをどうやってチェーンにするかという問題ですが、乱暴に一言で言えば、ブロック(という名前の台帳のページ)に、前のページの縮小コピペを張りつけるだけです。
これで、自分のブロック(ページ)が、前のブロック(ページ)の次のブロック(ページ)であることが、バッチリと分かります。
上の図で言えば、この縮小コピペによって、契約書Bの前のページは契約書Aがあって、契約書Cのページの前には、契約書Bがあること、つまり「チェーン」となっていることが明らかになります。つまり、この台帳は、契約書A→契約書B→契約書Cの順番で契約が締結し、それがチェーンになっていることが分かるのです。
「そんなことしたら、全然関係のない人に、契約書の内容が丸見えになるじゃん」と思われるかもしれませんが、実は、契約書の中の縮小コピペの内容は、暗号化されて、その契約と無関係の人には、何が記載されているか見えません。
「見えないなら、チェーンにならないだろう?」と思われるかもしれませんが、これ、きちんとした手順を踏めば、必ずちゃんと見える状態に戻せます。ただし、どえらい面倒くさい上に、ものすごく時間がかかります。
加えて、この暗号は必ずしも解読する必要はないのです。解読できることが「証明」できれば、それで十分です(これがハッシュ関数によるハッシュ値の使い方です)。つまり、暗号化された契約書本体を解読して開示する必要はないのです。
ブロックチェーンの改ざんは「とにかく面倒くさい」!
で、この「どえらい面倒くさい上に、ものすごく時間がかかる」が、ブロックチェーンの改ざんを不可能とする仕組みの根幹なのです。
例えば、契約書Aの内容を改ざんしてやろうという悪意の第三者が存在するとします。
普通なら、契約書を金庫から盗んで、すりかえるなりすれば良いでしょう。契約書については、契約書Aに関わる3人を抱き込む(拉致監禁、脅迫、買収、その他いろいろ)ようにすれば、実現できそうです。うん、それでも応じないやつは、拷問して偽造書類に署名を書かせた上で殺害してしまいましょう。
ところが、契約書Aを含むブロックチェーンが契約書Cまで繋っているとすると、話は恐ろしく面倒になります。
契約書Cには、契約書Aの内容がコピペされた契約書Bのコピペが添付されているからです。
契約書Aを改ざんするためには、契約書Bと契約者Cの関係者全員の同意を得て、もう一度、最初から、契約書A→契約書B→契約書Cの順番で契約を締結させて、それをチェーンとして再構築しなければなりません。
関係者総勢9人を巻き込んだ、一大改ざんプロジェクト ―― それも1人足りとも欠けてはなりません。そんな面倒くさいこと、誰が試みようとするでしょうか?
しかし、悪意の第三者の仕事はこれでは完了しません。なぜなら、契約書A→契約書B→契約書Cの順番で契約を締結させたブロックチェーンは、既に世界中にバラまかれているからです。
世界中にバラまかれているブロックチェーンの全部を書き換えるということは、関係者9人を引き連れて、世界中を旅行しなければならないということになります。当然そんなことは、できっこありません。
それに、契約書Aの改ざんをやっている間に、契約書D、契約書Eが追加されでもしたら、ブロックチェーンルール「複数の台帳が手元にあったら、一番厚い台帳だけを残して、残りの台帳は全て捨てろ」に基づき、苦労して改ざんしたブロクチェーンは、その「薄さ」故に、世界中でゴミ箱に廃棄されることになります。
ならば、契約書D、E、Fを偽造して、契約書A→B→C→D→E→Fのブロックチェーン全体を偽造して、ネットワークにぶん投げれば、「厚さ」で勝てそうな気がします。
しかし、D→E→Fには、コンセンサスプロトコルを実施して、複数の関係者の証明書が付与されなければ、チェーンにつなげられないので、これも実現できません。
結局のところ、契約書Aを改ざんする現実的な手段を考えるくらいなら、全面核戦争を引き起こして人類を「最初からなかったこと」にした方が簡単です。
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