東レ、極薄グラフェン分散液で流動性と導電性を両立:EV用電池寿命がCNT比1.5倍に
東レは、高い流動性と導電性を両立した極薄グラフェン分散液を開発した。早期実用化を目指すとともに、電池材料や配線材料、塗料などの用途に提案していく。
耐久性に優れた導電配線材料としての応用も可能
東レは2021年3月、高い流動性と導電性を両立した極薄グラフェン分散液を開発したと発表した。早期実用化を目指すとともに、電池材料や配線材料、塗料などの用途に提案していく。
同社はこれまで、安価な黒鉛原料をベースに、極めて薄い高品質グラフェンを作製する技術を開発してきた。グラフェンは薄くなるほど、塗布した時の被覆性や別の材料との混合性に優れている。一方で、薄くなれば固まりやすくなり、高濃度にすれば粘土状となって流動性が低下する、といった課題もあった。
そこで同社は、独自の高分子材料を添加することで、粘度を自在に制御できる分散技術を開発した。グラフェン同士の相互作用による凝集を抑えることができ、高濃度の極薄グラフェン分散液でも高い流動性を実現した。希釈をしなくても塗布することができ、高い導電性も維持できるという。他の材料との混合も容易である。
例えば、開発した極薄グラフェン分散液をリチウムイオン二次電池用導電材料として用いると、正極材料と混合しやすく、正極の間にグラフェンが入り込むことで導電性が向上する。この結果、充放電を繰り返し行っても、導電経路劣化による電池容量の低下は抑えられ、電池の寿命を延ばすことができる。
電気自動車(EV)向け電池は、導電助剤としてカーボンナノチューブ(CNT)が用いられてきた。今回の開発品を用いると、CNTを採用した時に比べ電池寿命が1.5倍向上することを、同社が行った評価試験により確認したという。
極薄グラフェン分散液は、塗布した後の乾燥工程でグラフェンが積層し緻密膜を形成する。このため、耐久性に優れた導電配線材料としての応用なども可能である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 製造コストを削減できるグラフェン製造法を開発
東北大学は、グラフェンを用い低環境負荷で超高速のデバイスを製造する方法を開発した。テラヘルツ(THz)帯で動作する高品質のグラフェントランジスタを、これまでに比べ100分の1以下という安価な製造コストで実現できるという。 - 二次元層状物質を用いた光多値メモリ素子を開発
物質・材料研究機構(NIMS)は、二次元層状物質を用いた光多値メモリ素子を開発した。照射するパルス光の強度によって、電荷蓄積量を多段的に調整することができる。 - グラフェンを用い室温でテラヘルツ電磁波を増幅
東北大学電気通信研究所の尾辻泰一教授らによる国際共同研究チームは、炭素原子の単層シート「グラフェン」を用い、室温で電池駆動によるテラヘルツ電磁波の増幅に成功した。 - 室温でTHz周波数帯を高効率に変換する物質を発見
東京大学の研究グループは、米国の研究グループらと協力し、室温でテラヘルツ周波数帯の高調波を、極めて高い効率で発生させることができる物質を発見、そのメカニズムも解明した。