Littelfuseジャパン、日本でのサポート体制を強化:筑波事業所で車載ヒューズを生産
Littelfuseジャパンは、筑波事業所を活用したローカルサポート体制の強化などにより、日本市場での2桁成長を持続し、2025年には全社に占める日本での売上高構成比を現在の約2倍となる10%規模に拡大していく計画だ。
2025年には全社売上高の10%を日本市場で
Littelfuseジャパンは2021年3月18日、日本市場における長期戦略などについて記者説明会を行った。筑波事業所を活用したローカルサポート体制の強化などにより、日本市場での2桁成長を持続し、2025年には全社に占める日本での売上高構成比を現在の約2倍となる10%規模に拡大していく計画だ。
Littelfuseは、ヒューズやポリマーPTC(ポリスイッチ)などの「回路保護素子」、IGBTやSiC MOSFETなどの「パワー半導体」および、リードスイッチやサーミスターなどの「センサー」を大きな柱として事業を拡大してきた。
2020会計年度の全社売上高は14億5000万米ドルで、2019年度に比べると4%の減少となった。ただ、直近四半期ベースの売上高をみると、伸長率は前年同期に比べ大きなプラスに転じており、回復の兆しが見えてきたという。
Littelfuseジャパンの代表を務める亥子正高氏は、日本市場の業績についても触れた。日本市場における2020年度売上高は、2019年度に比べ9%の減少となった。全社ベースの売上高に比べ日本での減少率が大きかったことについて、「オートモーティブ事業の落ち込みが大きく、回復のタイミングが若干遅れた。その分、2021年度は主要な全ての分野で大きな回復を見込んでいる」と話す。
実際に日本市場では2021年度の売上高として、前年比10%台後半の伸びを計画している。その理由として亥子氏は、「アジア圏におけるエレクトロニクスの旺盛な需要」「自動車の生産台数回復」「製造装置関連市場の急回復」などを挙げた。ただ、車載用TVSダイオードなど一部製品で需給がタイトになり、リードタイムは2倍に長期化している。こうした中で、「需給がひっ迫している状況は、2021年後半より少しは解消されるだろう」と、現時点での見通しを明らかにした。
続いて、2021〜2025年における成長戦略を紹介した。成長テーマとして挙げているのが、「持続可能性」「コネクティビティ」「安全性」の3つである。こうした中で、戦略的なM&Aと既存事業の強化などを軸に、売上高は年平均成長率2桁、営業利益率17〜19%を目指す方針である。
日本市場においては、ポリスイッチでの強みを他製品にも生かしていく。具体的には産業用パワー半導体や車載用プロテクション半導体といった半導体製品を中心に、日本市場でのシェアアップを目指す。このために、ポリスイッチの生産拠点である筑波事業所を活用する。筑波事業所では現在、自動車や産業向けポリスイッチの設計から製造、出荷および品質管理まで一元管理している。
今後は筑波事業所を活用したローカルサポート体制を強化する。今回明らかにしたのは車載バッテリー用メインヒューズの国産化である。ヒューズ自体はこれまで通りメキシコの工場で生産するが、国内自動車メーカー向けカスタムモジュールのアセンブリや出荷前検査を筑波事業所で行うことにした。生産の一部を国内に移管することで、より高品質の製品を供給していくという。「2021年末頃には筑波事業所で量産を始めたい」(亥子氏)考えだ。
この他、日本市場では新規の受注獲得にも成功している。例えば、メガソーラー向けの高電圧ヒューズである。450〜1500Vの高電圧に対応した製品。「北米市場では多くの採用実績がある。今回、日本市場でも数億円の受注に成功した」(亥子氏)と話す。
5G(第5世代移動通信)基地局装置向けの回路保護ソリューションもその1つ。ハイパワーTVSダイオードやパッシブヒューズを用いて、外部からの雷サージや電源ラインの過電流などによるシステムの故障や誤動作を防ぐことができる。「世界市場で高いシェアを持つ当社製品が、世界で5G基地局用装置の販売を目指す日本企業に認知され、受注に結びついた」と分析する。
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