汎用PC+FPGAで構成する量子コンピュータ:D-CLUEがモックを展示
エレコムグループの1社で半導体設計などを手掛けるディー・クルー・テクノロジーズ(以下、D-CLUE)は、「第1回 量子コンピューティングEXPO 春」(2021年4月7〜9日/東京ビッグサイト 青海展示棟)で、同社が開発中のイジングマシンを紹介した。
エレコムグループの1社で半導体設計などを手掛けるディー・クルー・テクノロジーズ(以下、D-CLUE)は、「第1回 量子コンピューティングEXPO 春」(2021年4月7〜9日/東京ビッグサイト 青海展示棟)で、同社が開発中のイジングマシンを紹介した。
同社が手掛けるのはシミュレーテッドアニーリング方式のマシン。PCI Express(PCIe)対応のボード上に、「量子FPGA」(数式およびアルゴリズムをハードウェア化してFPGAに実装したもの)を搭載したもので、試作デモ機は2021年12月に完成する予定だという。LSIではなく、FPGAを用いるので、ターゲットアプリケーションごとに量子ビットの更新アルゴリズムをカスタマイズすることが可能だ。D-CLUEは現在、デモ機を評価してくれる協業先やパートナー企業などを探しているという。
D-CLUEのCTO(最高技術責任者)を務める長澤達也氏は、ブースにて行ったプレゼンテーションで、「市場には大規模、高性能の量子コンピュータがあるが、当社が目指すのはあくまでも汎用PCで実現する量子コンピューティング」だと強調する。
応用分野としては、最適化問題の例としてよく挙げられる道路の混雑回避のアプリケーションの他、画像認識でも強みを発揮できるとする。さらに、「近年トレンドとなっているエッジAIと組み合わせることで、無限の可能性を実現できるのではないか」(長澤氏)とも語った。
同氏は、「開発中のイジングマシンはFPGAに実装するタイプだが、われわれはそこからASICを設計する技術も持っている。将来的には、特定用途に限り、超低消費電力で小型の量子コンピュータを実現できると考えている。近い将来、量子コンピュータがスマートフォンに実装される日が来るかもしれない」と続けた。
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