TSMCが2021年の設備投資を300億ドルに再度引き上げ:半導体需要の高まりを受け
世界最大の半導体ファウンドリーであるTSMCは、顧客需要が3カ月前の同社の予想を上回ったことを受け、2021年の設備投資額を再度引き上げて、300億米ドルに増額した。
世界最大の半導体ファウンドリーであるTSMCは、顧客需要が3カ月前の同社の予想を上回ったことを受け、2021年の設備投資額を再度引き上げて300億米ドルに増額した。
同社の設備稼働率は100%に達しようとしている。そのため、同社は2021年1月に、同年の設備投資額を約280億米ドルに引き上げると発表していた。今回発表した300億米ドルという額は、同社が2020年に投資した172億米ドルの約1.6倍となる。
TSMCはアナリストとの電話会議で、「先端技術や特殊技術の需要は今後数年間、増加すると予想されており、これに対応するために設備投資額を引き上げた」と述べている。予算の約80%は3nmや5nm、7nmなどの主要プロセス技術に、10%は先端パッケージング技術やマスク製造に、10%は特殊技術に充てるという。
TSMCのCEO(最高経営責任者)を務めるC.C.Wei氏は、業績発表のカンファレンスコールで、「私たちは今、基礎となる半導体需要の構造的な増加を目の当たりにしている。今後数年間にわたり5G(第5世代移動通信)とHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)関連のアプリケーションのメガトレンドが予想され、当社の先端技術に対する強い需要が見込まれる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、デジタルトランスフォーメーションが抜本的に加速するとともに、半導体が人々の生活により浸透し不可欠なものになっている」と語った。
Wei氏は、「TSMCは今後3年間で約1000億米ドルを投資して、最先端技術や特殊技術の生産能力や研究開発を強化すると同時に、グローバルサプライチェーンの信頼を高める計画だ」と付け加えた。
アナリストの中には、こうした予測に驚きを覚えた人もいる。
Goldman SachsのアナリストBruce Lu氏はカンファレンスコールで、「TSMCが複数年にわたる設備投資について発表するのは、今回が初めてだ。このことから、同社が2023年以降も非常に堅調な成長を見込んでいることが分かる」と述べている。
TSMCは、「顧客やサプライチェーンは、2021年を通じて高水準の在庫を確保すると考えている。業界が引き続き供給保証を確保する必要があると考えると、こうした状況は2022年も続くと予想される。この予測の根拠は、AppleやVolkswagenなどの半導体バイヤーが、半導体不足からスマートフォンや自動車の生産ラインの休止せざるを得なくなっていることにある」と述べている。
TSMCは「米国テキサス州の寒波や日本の工場の混乱が世界の半導体生産に影響を及ぼしている」と述べる。なおWei氏によると、台湾の水不足はTSMCの生産量に影響していないという。
同社は、「2021年の半導体市場は全体(メモリを除く)で約12%成長し、ファウンドリー市場は約16%成長すると予想される」と述べている。TSMCの売上高は約20%増加する見込みだ。TSMCは、加工したウエハーの値上げについては明言したかったものの、コスト改善に取り組みつつ、ウエハー価格を“堅実に”設定することを目指していると述べた。
TSMCは、2021年後半に4nmプロセス(5nmの拡張版)を立ち上げ、2022年内にも量産を開始する計画だと述べた。同社は、3nmプロセスの商用生産も2022年後半に開始する予定だ。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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