NVIDIA「DRIVE Atlan」、1000TOPSの信ぴょう性:“AIの波”に乗る(1/2 ページ)
現在、自動運転車の市場は潜在的な可能性を秘めている。NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は、「数兆米ドル規模のエコシステム」の実現に向けた計画を自社イベント「GTC(Graphic Technology Conference)」でアピールした。
1000TOPSの「Atlan」を発表
現在、自動運転車の市場は潜在的な可能性を秘めている。NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は、「数兆米ドル規模のエコシステム」の実現に向けた計画を自社イベント「GTC(Graphic Technology Conference)」でアピールした。
Huang氏は2021年4月にオンラインで開催されたGTCの基調講演で、自動運転について「20年前には全てがSF(サイエンスフィクション)だった。10年前は夢のような話だった。そして今日、われわれはそれを実現しつつある」と語った。
Huang氏のスピーチは自画自賛ではあったが、GTCで発表された一連の技術は印象的な内容であった。
Huang氏は、次世代車載半導体の「DRIVE Atlan」を発表した。2025年モデルへの搭載を予定している。同SoC(Sytem on Chip)は1000TOPSを実現する見込みで、新たなCPU、GPU、次世代自動運転車に必要な最新のネットワークならびにセキュリティ機能を備えた深層学習アクセラレーター(DLA)で構成されている。
NVIDIAは、データ収集、自動運転開発/テスト向けに考案された自動運転プラットフォーム「DRIVE Hyperion 8」も発表した。
さらにHuang氏は、シミュレーターの新たなシリーズとして「DRIVE Sim」を発表した。同社の3D設計コラボ基盤「Omniverse」上で動作されるもので、自動運転開発/検証に向けた現実世界のシナリオを実行するために必要とされる。
NVIDIAは自動車領域においてVolvo Cars、Mercedes-Benz、NIO、SAIC、TuSimple、Zoox、Cruise、Faraday Future、VinFastといった企業との取引を含めた80億米ドル規模のパイプラインを有していると主張している。
自動車業界アナリストであるEgil Juliussen氏は、NVIDIAがGTCで発表した全ての技術と製品のうち、最も重要なのは恐らく、自動運転車開発向けのリファレンスプラットフォーム「Hyperion 8」であると確信しているという。
その理由として、Juliussen氏は、Hyperion 8がメーカーや新興企業、運輸会社からの研究開発(R&D)フェーズでの新たなデザインウィンの種をまいている可能性があることを挙げた。また、Juliussen氏は同プラットフォームが「自動運転システムに取り掛かるプロセスや将来の製品を開発するプロセスを大幅に簡素化する」と説明した。
Hyperion 8は、「IC業界にとって常に重要である開発システム」や「AI(人工知能)ベースの自動運転技術関連企業にとってのクラウドコンピューティングソフトウェア」に等しいものであり、「強力な開発システムになる」とJuliussen氏は述べた。基調講演の中で、Huang氏はAWSやGoogle Cloudとの協業についても言及した。
Juliussen氏は「DRIVE Atlanは、GPUベースのSoCの性能が継続的に進化していることを示している」と述べた。
一方で、The Linley GroupのシニアアナリストであるMike Demler氏は「NVIDIAが将来のプロセッサを事前予告するタイミングは世代ごとにだんだん早くなっている」と指摘する。
Demler氏は「(現行世代「Xavier」の後継である)『Orin』がまだ生産段階にすら入っていないのに、NVIDIAはその後継としてAtlanを発表している。現時点では、Atlanのブロック図と1000TOPSという仕様は単なるハイレベルな設計目標にすぎない」と述べた。
米国EE TimesがNVIDIAオートモーティブ担当シニアディレクターであるDanny Shapiro氏に対し、Atlanで使用するのはどのプロセスノードになるのか尋ねたところ、同氏はコメントを拒否した。NVIDIAはAtlanがいつテープアウトするのかも明らかにはしないだろう。Demler氏は、初のAtlanシリコンが2023年後半に業界にお目見えすることはないと考えている。
Demler氏は、Atlanが答えよりも疑問をもたらしているとみている。同氏は「NVIDIAはTOPSが新たな馬力だというが、効率についてはどうなのか。同社は自動運転性能要件を高め続けている」と述べた。
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