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NVIDIA「DRIVE Atlan」、1000TOPSの信ぴょう性“AIの波”に乗る(2/2 ページ)

現在、自動運転車の市場は潜在的な可能性を秘めている。NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は、「数兆米ドル規模のエコシステム」の実現に向けた計画を自社イベント「GTC(Graphic Technology Conference)」でアピールした。

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「1000TOPS」の信ぴょう性

 同氏は、「NVIDIAは、2017年に発表したXavierを搭載する『Drive Pegasus』について、320TOPSの処理性能を持つレベル5の自動運転システムとうたっていたことを思い出してほしい。同社はその後400TOPSのOrin、さらに1000TOPSのAtlanを発表した。Mobileyeが約10分の1のTOPSで自動運転車を構築していることから考えても、1000TOPSという数値が信頼に値する測定値でないことは明らかだ」と述べている。さらに、「同社はMercedesやVolvoのデザインウィンを獲得できるかもしれないが、Atlanが実際に生産されるまでは意味がない」と付け加えた。

 Atlanの処理性能について懐疑的な見方をしているのはDemler氏だけではない。ほとんどのアナリストは、NVIDIAの「1000TOPS」という主張を完全に信じているわけではない。


NVIDIAの「DRIVE」SoCのロードマップ 出典:NVIDIA(クリックで拡大)

 そう考える根拠として、Juliussen氏の「1000TOPSは、めったに達成できないピーク性能だ」という発言がある。同氏はかつて、「TOPSは、Totally Optimistic Processor Speed(非常に楽観的なプロセッサ速度)の略だと考えている」と語っていた。同氏は「もう1つの重要な要素は消費電力で、処理性能より重要だ」としながらも、まだその数値を公表していない。

 Demler氏は、AtlanのSoCアーキテクチャにも疑問を呈している。「NVIDIAは計測機能やインフォテインメント、ADAS(先端運転支援システム)/自動運転、ドライバーモニタリング、ネットワークゲートウェイなど、あらゆる機能にAtlanチップだけで対応することを目指している。NVIDIAは自動車を車輪のついたサーバのように捉えているが、自動運転車はデータセンターと違って無限のパワーがあるわけではない。これらの機能を全て1チップに搭載することが最良のアプローチであるかどうかは定かではないにもかかわらず、NVIDIAは、Atlanチップファミリーは期待に沿える製品だと主張している」(Demler氏)。同氏は、Atlanの「オールインワンチップ」という表現は、実際の設計を説明するためではなくキャッチコピーとして使われていると示唆している。

 「とはいえ、NVIDIAのDRIVE SoCには、上位互換性があるという強みがある」とJuliussen氏は指摘する。これによって、ソフトウェアエコシステムを新世代のチップに対応させて再利用することが可能だ。

車載分野でデザインウィンを獲得し続けるNVIDIA

 NVIDIAはどのように自動車市場をリードしてきたのだろうか。Juliussen氏は、「2つの要素がある。NVIDIAのエコシステム(ハードウェアやソフトウェア、AIモデルなど)と、より高性能なSoCへの期待だ」と述べている。

 一方、「Mobileyeにはシステム戦略がある」とJuliussen氏は考えている。Mobileyeが2021年4月に、自動配送サービスを手掛ける米国の新興企業Udelvとの合同会見で説明していたように、Mobileyeの強みであるREM(Road Experience Management)やRSS(Responsibility Sensitive Safety)、センサーの『True Redundancy(確かな冗長性)』は非常に優れており、ユースケースレベルの自動運転車でデザインウィンを獲得できると予想される」という。ただし、Juliussen氏は、「生産量が10万〜100万台レベルになったときに、Intel/Mobileyeがこのシステム戦略を発展させて、ハードウェアコンポーネントレベルで競争できるかは疑問だ」と述べている。

 Juliussen氏は、「注目すべきは、NVIDIAが複数のレベルで勝利していることだ」と述べている。

 同氏によれば、「自動運転ソフトウェアプラットフォームに関しては、主要企業のほとんどがまずNVIDIAベースのハードウェアを使用するため、引き続きNVIDIAのSoCを採用する可能性が高い」という。同氏がEE Timesで執筆した「A Breakdown of AV Software Platform ‘DesignWins’」でJuliussen氏は「自動運転ソフトウェアプラットフォーム企業の多くが、NVIDIAの自動運転向けハードウェアを使用している。例えばAurora、AutoX、Nuro、Navya、Pony.ai、TuSimple、Yandex、Zooxなどだ」と記載している。

 NVIDIAのデザインウィンの次の段階はティア1各社だ。Bosch、Continental、ZFなどが、NVIDIAベースの車載プロセッサボードを自動車メーカーに提供している。

“AIの波”に乗る

 GTCの基調講演でHuang氏は、数十年の間に台頭した“AIの波”について言及した。同氏は、「われわれは今、次の波の始まりにいる」と述べた。“次の波”の特長は、「AIが、エンタープライズとインダストリアルエッジで革命を起こすこと」だという。その範囲は、製造業、物流、農業、ヘルスケア、金融サービス、そして輸送など幅広い産業に及ぶ。

 Huang氏は、この“次の波”に自律システムを加え、その中でも「自動運転車は優れた例である」と述べた。

 テクノロジーの岸辺に押し寄せるAIの波の中でも、インダストリアルエッジと自律システムについては、「最も困難であると同時に、AIが影響を与える最大の機会でもある」と語った。

【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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