EVのインバーター向けSiC-MOSFETパワーモジュール:航続距離を5%以上伸ばせる(1/2 ページ)
Infineon Technologiesの日本法人インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2021年5月19日、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)といった電動車両のトラクションインバーター向けに、SiC-MOSFETを搭載したパワーモジュール「HybridPACK Drive CoolSiC」を発表した。
Infineon Technologies(以下、Infineon)の日本法人インフィニオン テクノロジーズ ジャパン(以下、インフィニオン)は2021年5月19日、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)といった電動車両のトラクションインバーター向けに、SiC-MOSFETを搭載したパワーモジュール「HybridPACK Drive CoolSiC」を発表した。SiC-MOSFETを採用することで、特に800Vバッテリーシステムや大容量バッテリーを搭載した車両において、Si-IGBTベースのパワーモジュールを使用した場合に比べてより長い走行距離と、システムの小型化およびコストの低減が図れるとする。
InfineonはSiCパワー半導体を「CoolSiC」というブランドで展開している。今回の製品は、SiC-MOSFET(CoolSiC MOSFET)を、電動車両向けのパワーモジュール「HybridPACK Drive」に搭載したもの。
InfineonのパワーモジュールにはHybridPACK Driveの他にも、名刺サイズと小型の「HybridPACK Easy」や、両面冷却が可能な「HybridPACK DSC(Double Sided Cooling)」などがある。HybridPACK Driveは比較的大型で、これ1つで1個のモーターを駆動できる。これらのパワーモジュールはSi-IGBTを用いたラインアップもあり、同じモジュールであれば、Si-IGBTベースからSiC-MOSFETベースへも容易に移行できる。
HybridPACK Driveは既に100万個以上の出荷実績があり、同モジュールを搭載したプラットフォームが20以上存在する。
今回発表したHybridPACK Drive CoolSiCは耐圧1200Vで、出力が400Aと200Aの2タイプがある。インフィニオン オートモーティブ事業本部 ヴィークルモーション シニアマネジャー アプリケーション マーケティングを担当する林直樹氏は、「Si-IGBTと比較してバッテリーの使用率を5〜10%向上する」と説明する。
SiC-MOSFETをメインインバーターに用いた時のエネルギー消費量。Si-IGBTと400Vバッテリー、SiC-MOSFETと400Vバッテリー、SiC-MOSFETと800Vバッテリーの組み合わせで比較している。SiC-MOSFETを用いると、燃費(WLTP[Worldwide harmonized Light duty driving Test Procedure]モード)が16Wh/kmから5〜6Wh/kmと低減できることが分かる 出典:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン(クリックで拡大)
HybridPACK Drive CoolSiCは現在サンプル出荷中で、同年6月から出荷を開始する。Infineonは、HybridPACK Drive CoolSiCに加えて、同モジュールを駆動するゲートドライバー基板や、ゲートドライバーを駆動するマイコン「Aurix」を搭載したロジック基板、周辺の電源ICなどを搭載し、400V/800Vバッテリーに最適化した評価キットも提供する。2021年第3四半期に入手可能になる予定だ。
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