EVのインバーター向けSiC-MOSFETパワーモジュール:航続距離を5%以上伸ばせる(2/2 ページ)
Infineon Technologiesの日本法人インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2021年5月19日、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)といった電動車両のトラクションインバーター向けに、SiC-MOSFETを搭載したパワーモジュール「HybridPACK Drive CoolSiC」を発表した。
Infineon独自のトレンチ構造
InfineonのCoolSiC MOSFETは、独自のトレンチ構造で製造されている。MOSFETで一般的な構造はプレーナー型だが、これは製造プロセスは比較的容易だが、ゲート酸化膜の下に欠陥密度が高い領域ができ、チャネル抵抗が高くなってしまう。加えて、一定以上の微細化が難しい。そのため、業界全体のトレンドとして、欠陥密度を低減できる「トレンチ構造に向かっている」(林氏)という。「ゲート酸化膜の信頼性と、デバイスの性能にはトレードオフがあるが、Infineonとしては多少性能を犠牲にしても高い信頼性を確保することで差別化している」と林氏は述べる。
フィラッハの300mm工場を前倒しで稼働開始へ
インフィニオンのシニアバイスプレジデントでオートモーティブ事業本部 本部長を務める神戸肇氏は、Infineonのオートモーティブ事業についても言及した。同社の2020年度におけるオートモーティブ事業の売上高は35億4200万ユーロで、売上高全体の43%を占める。Strategy Analyticsの調査によると、車載半導体市場での2020年のシェアは13.2%でトップ。パワー半導体でも1位となっている。さらに、Cypress Semiconductorを買収したことで「従来の制御系に加え、クラスターパネルやナビゲーションといった車載インフォテインメント系の製品も加わった」(神戸氏)と強調する。
さらに神戸氏は供給体制についても触れた。半導体不足という現状を考慮すると「供給も重要な側面」とし、「パワー製品は全て自社で製造していることがわれわれの強み」と強調。Infineonは、ドイツ・ドレスデン工場の他、オーストリア・フィラッハにも最新の300mmウエハー対応のパワー半導体工場を立ち上げ中で、2021年7〜9月期に量産を開始する予定だ。半導体不足の現状を受け、「当初の発表よりも1四半期早い稼働開始となる」(同氏)。SiCパワー半導体も、フィラッハの新工場で製造される。
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