5G向けスペアナ、110GHz帯対応で解析帯域幅は最大4GHz:キーサイトが発表
キーサイト・テクノロジー(以下、キーサイト)は2021年5月24日、スペクトラムアナライザー(スペアナ)の新製品「N9042B UXAシリーズ」を発表した。キーサイトは2016年にスペアナを一新し、「Xシリーズ シグナル・アナライザー」として5種類のシリーズを展開している。今回の新製品は、その中でもフラグシップシリーズとなる「UXAシリーズ」の最新製品となる。
キーサイト・テクノロジー(以下、キーサイト)は2021年5月24日、スペクトラムアナライザー(スペアナ)の新製品「N9042B UXAシリーズ」を発表した。キーサイトは2016年にスペアナを一新し、「Xシリーズ シグナル・アナライザー」として5種類のシリーズを展開している。今回の新製品は、その中でもフラグシップシリーズとなる「UXAシリーズ」の最新製品となる。
N9042B UXAシリーズは、5G/6G(第5/第6世代移動通信)、航空/防衛、衛星通信などをターゲットとする。広い解析帯域幅と高い周波数帯域により、特に、ミリ波帯域での通信性能の試験を強化できる。さらに、ノイズ性能も強化した。5G以降では、より高い周波数とより広い帯域幅が活用されることになるが、周波数が高いほどパス損失が増加してS/N比が低下したり、帯域幅が広いほどノイズが多くなりS/N比が低下したりといった課題が発生する。キーサイトでマーケティング・イニシアチブ・マネージャーを務める徳田裕司氏は、「そのため、計測器などのテストソリューションでは、優れたノイズ性能が必要になる」と説明する。
N9042B UXAシリーズの解析帯域幅は最大4GHz。さらに、外部のデジタイザと組み合わせることで最大11GHzまで拡張可能だ。キーサイトのソリューションエンジニアである森田恭維氏は「既存のUXAシリーズでは解析帯域幅が最大1GHzだったが、ギガヘルツオーダーのアプリケーションの登場を見据えて、解析帯域幅を大幅に拡張した」と説明する。
周波数帯域は、本体のみでは最大50GHz。これに、今回併せて発表した周波数エクステンダー「V3050A」を組み合わせることで最大110GHzまでの信号を計測できる。さらに、外部のコンバーターと組み合わせれば、最大1500GHzまで対応することも可能だ。V3050Aは、ハードウェアプリセレクター(スペアナに信号が入力する際、できるだけノイズを除去するためにある程度、入力信号の周波数を絞る機能)を、全周波数で採用している。「従来機種では、50GHz以上の周波数では、ソフトウェアのプリセレクターを実装していた。ハードウェアでは実装が難しかったからだ。だが、ソフトでは精度がハードよりも劣るので、今回はハードウェアのプリセレクターを実装した」(森田氏)
V3050Aは、リモートヘッドを採用していて、DUT(被測定物)の近くで測定することができる。信号は周波数が高いと減衰が大きくなるので、測定に数メートルと長いケーブルを使うと、大きく減衰した信号を解析することになってしまう。リモートヘッドを使うことで、測定器とDUTの距離を10cm程度まで縮めることができるという。
N9042B UXAシリーズのノイズ性能については、EVM(エラーベクトル振幅)、DANL(表示平均雑音レベル)も向上している。例えば、5Gミリ波の信号を測定したとき(48GHz帯/100MHz幅)のEVM性能は−47dB(0.45%)だった。「測定条件にもよるが、従来のUXAシリーズに比べて最大4dBの改善が図られている」(森田氏)
DANLは、40GHz帯において−163dBm/Hzを実現。以前のUXAシリーズでは−150dBm/Hzだった。従来はプリアンプでノイズレベルを低減していたが、今回はそれにLNA(低ノイズアンプ)を追加し、アンプを2段構成とした。信号の条件によって、これら2つのアンプのオン/オフを切り替えることで、より低いノイズレベルを実現した。
N9042B UXAシリーズで使えるソフトウェアの一例。N9042B UXAシリーズには新しいCPUが搭載されているので、これらのソフトもより高速で動作する 出典:キーサイト・テクノロジー(クリックで拡大)
N9042B UXAシリーズの参考価格は、50GHz対応/解析帯域幅1GHzでプリアンプ内蔵のモデルが約2600万円から。110GHz対応/解析帯域幅1GHzとV3050Aの組み合わせが約3900万円からとなっている。
その他、スペアナのキャリブレーターとして「U9361 Rcal レシーバーキャリブレータ」もそろえている。測定前にDUTの代わりとしてスペアナに接続すると、最大5GHzのIF帯域幅までのシステム経路損失と周波数応答を補正することができる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- キーサイトがスペアナ一新し、全機種タッチ対応に
キーサイト・テクノロジーは、主力のスペクトラムアナライザー製品群「Xシリーズ」を一新した。これまでハイエンド機種に限って搭載していたタッチパネルインタフェースを全機種に搭載した他、性能向上を図った。価格については、従来の価格帯とほぼ同じに据え置いた。 - リモート測定を容易にする小型オシロなど4種を発表
キーサイト・テクノロジー(以下、キーサイト)は2021年3月16日、教育機関での実験や小規模のR&Dをターゲットとするエントリーレベルのベンチトップ型計測器シリーズ「Smart Bench Essentials(SBE)」を発表した。帯域50MHzのオシロスコープ、5.5桁のDMM(デジタルマルチメーター)、3出力のDC電源、23種類の波形を生成可能なファンクションジェネレーターという4種類の計測器と、ソフトウェア「PathWave BenchVue」で構成されている。 - 「電源エコシステム全般をカバー」8chオシロ新製品
キーサイト・テクノロジーは2020年11月、8チャンネルオシロスコープの新製品「Infiniium EXRシリーズ」を発表した。ミドルレンジの汎用モデルオシロとして多くの機能を備えるが、特に「電源のエコシステム全般をカバーする」というさまざまな電源解析機能が最大の特長。同社説明担当者は「最も多様な電源解析ができ、コストパフォーマンスも高いモデルだ」としている。 - 同時に3対象を模擬するRTS、評価時間とコストを削減
自動運転車の急速な発展とより優れた安全特性への需要の高まりから、感度が高く正確な車載用レーダー技術の必要性は高まっている。今回、こうした高性能のADAS(先進運転支援システム)の開発をサポートする新たな「レーダーマルチターゲットシミュレーター」を開発したキーサイト・テクノロジー(以下、キーサイト)の担当者に話を聞いた。 - スペアナ統合の6GHz/8chオシロ、AIで異常信号検知
キーサイト・テクノロジーは2020年5月18日、ミドルレンジの新しいミックスドシグナルオシロスコープ「Infiniium MXRシリーズ(以下、MXRシリーズ)」を発表した。