「iMac」の分解に見る、Appleの“半導体スケーラブル戦略”:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(53)(2/3 ページ)
Appleの新製品群「AirTag」や「iMac」、新旧世代の「iPad Pro」などのチップを分析すると、Appleが、自社開発の半導体をうまく“横展開”していることが見えてくる。
新型「iMac」を分解
図3はAppleが2021年5月21日に発売を開始したディスプレイ一体型のPC「iMac」の分解である。
大きな梱包箱の中には本体、ワイヤレスマウス、ワイヤレスキーボード、電源アダプターが内包されている。取り出して電源を接続すればそのまま使用できる構成だ。ディスプレイ一体型なので分解はディスプレイの取り外しから行う。ディスプレイは両面テープで取り付けられているので、無傷で取り外すことができるものとなっている(ただし若干の注意は必要)。ディスプレイ側にはタイミングコントローラーやドライバーICがびっしりと並んでいる(図3の右下の金属シールド下にドライバー8チップ、ディスプレイ用10チップが存在する)。
図4は、本体内部の分解の過程である。左上がディスプレイを取り外した状態。下がメインのコンピュータ処理基板を外した様子。右上が全部品を取り外した様子である。
メイン基板以外にも外部端子用の基板、カメラ基板などの小基板が3個ほど存在する。内部には基板以外にもディスプレイやマイクロフォンなどを接続するフレキシブル配線やバックアップ用電池、基板冷却用の空冷ファン、左右のスピーカーなどが搭載されている。主なファンクションは全て本体下部に集中されており、メイン基板だけで機能はほぼ完結されているわけだ。iMacの筐体の面積における基板の大きさは、わずかに6.1%となっている。内部はほぼ『空っぽ』なのだ!
図5はiMacのメインの基板の様子である。内部にはApple独自のプロセッサである「Apple M1」、同じくAppleが開発した電源制御IC、ストレージメモリ、Wi-Fiなどの通信チップ、外部インタフェース、オーディオチップなどだけで構成されている。
基板の左側は主に電源系、右側がコンピュータ処理部と分けられている。M1プロセッサ部は全体を覆い被るようにヒートシンクが設置されており、図5ではヒートシンクの取り外しの様子も掲載した。ヒートシンク下部にはM1があるが、取り外した状態ではチップ上に放熱用のジェルやシートが搭載されており右側のような写真にはならない。右側は放熱材を取り除いた状態である。さらに、M1には金属リッドが搭載されている(ちなみに、リッドの取り外しの難易度は極めて高い)。
基板には多くのパワーインダクターやコンデンサーがびっしりと並んでいる。中央には、電源アダプターからの端子を接続するためのコネクターとピッタリ接続するための強力なマグネットが備わっている。
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