暗号通貨のマイニングも半導体不足の一因:解消のメドが立たない
機器メーカー各社はパンデミックのさなかに、半導体チップが不足するという問題に直面しながらも、「やがて全てが落ち着けば回復するだろう」と楽観視していた。しかし、材料不足が原因でサプライヤーからの出荷が低迷したために、何とか製品を市場に投入すべく、自社の古い在庫を消費した。だが今になっても、新たに半導体チップが追加される兆しは見えない。
機器メーカー各社はパンデミックのさなかに、半導体チップが不足するという問題に直面しながらも、「やがて全てが落ち着けば回復するだろう」と楽観視していた。しかし、材料不足が原因でサプライヤーからの出荷が低迷したために、何とか製品を市場に投入すべく、自社の古い在庫を消費した。だが今になっても、新たに半導体チップが追加される兆しは見えない。スマートフォンやテレビ、PCなどのさまざまな製品で使われるあらゆる種類の半導体ICが供給不足のまま、状況は悪化の一途をたどっている。
半導体不足の初期段階の問題は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による工場の休業だった。また、ほとんどの港湾や空港が閉鎖され、材料メーカーや輸送会社各社が混乱状態に陥った。現在、生産に関しては通常の水準まで戻りつつあるが、人々の生活習慣の変化によって半導体需要が急激に増大したことにより、マイクロチップ不足は危機的なレベルに達している。リードタイム(発注から納品までの時間)も長くなっている。
Susquehanna Financial Groupが発表したレポートによると、半導体チップのリードタイムは2021年4月の時点で、17週間まで延びたという。このため機器メーカーは、これまで以上に死に物狂いでチップを安定的に確保しなければならなくなる。例えば、1年間の半導体購入額が580億米ドルに達するというAppleの場合、最新スマートフォン「iPhone 12」の発表時期を数カ月延期せざるを得なくなった。
そして、半導体不足をさらに悪化させる要因となっているのが、2020年に市場に投入された新型ビデオカードや家庭用ゲーム機を全て“飲み込んで”しまった転売業者やデータマイナー(採掘者)たちの存在だ。転売業者がビデオカードやゲーム機の小売価格を3倍に引き上げる一方で、マイナーはNVIDIAやAMDの最新技術を使って暗号通貨(特にイーサリアム)を採掘しており、ゲーマーは法外な値段を払うか、ゲームを完全に放棄するかのどちらかを迫られている。最新のマルチコアプロセッサやSSDも同様に、ビットコインを保管するために購入されている。
最新のビデオカードによる暗号通貨のマイニングは、自動車市場にも影響を与えている。データマイナーに対抗し、チップ不足を少しでも解消すべく、NVIDIAはグラフィックスカード「GeForce RTX 3060」にソフトウェアで制限をかけ、マイニング性能を下げた。それにもかかわらず、マイナーらはダミーのHDMIコネクターを利用するなどし、この制限を回避している。暗号通貨のマイニングは、半導体不足に一層拍車を掛けている。
Forresterのレポートによると、半導体の不足は今後数年にわたって続くと予想されている。同社はレポートで、「需要は引き続き高く、供給は制限されるため、2022年から2023年にかけても半導体不足は続く」としている。「2022年はPCの急成長が少し弱まるが、データセンターへの投資は、2020年の惨憺たる状況を経て再開され、エッジコンピューティングはテクノロジーにおける新たな『ゴールドラッシュ』となるだろう。これに、(センシングによる)計測や暗号通貨のマイニングなどの市場の継続的な成長が加われば、半導体市場にとっては好機以外の何ものでもない」(同社)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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