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“ポストAI時代”の大規模導入を見据えるSambaNova総額11億ドルを調達した新興企業(1/2 ページ)

データセンター向けAI(人工知能)チップやシステム開発を手掛ける新興企業SambaNovaは最近、シリーズDの投資ラウンドにおいて6億7600万米ドルという巨額の資金を調達し、大きな注目を集めている。同社は、2020年末にひっそりと登場した、社員数百人の若い企業でありながら、50億米ドル超というとてつもない企業価値を実現した。

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 データセンター向けAI(人工知能)チップやシステム開発を手掛ける新興企業SambaNovaは最近、シリーズDの投資ラウンドにおいて6億7600万米ドルという巨額の資金を調達し、大きな注目を集めている。同社は、2020年末にひっそりと登場した、社員数百人の若い企業でありながら、50億米ドル超というとてつもない企業価値を実現した。同社がこれまでに調達した資金は11億米ドルを上回り、今や世界中のAIチップメーカーの中で調達資金額が最も多い企業の1つとなった。米国EE Timesは今回、同社のCEO(最高経営責任者)を務めるRodrigo Liang氏にインタビューを行い、同社の戦略とロードマップについて話を聞いた。


SambaNovaのCEO、Rodrigo Liang氏 画像:SambaNova

 最初に、「SambaNovaや、データセンター向けAIチップ市場の競合他社は、なぜこのような巨額の資金を引き付けているのだろうか。これらの資金は、適切な製品を実現するために必要なのか。または、既存企業に立ち向かうために使うのか。それとも、ただ単に投資家たちの市場機会に対する見解の現れなのだろうか」とする質問を投げかけた。

 Liang氏は、「われわれの知る限り、半導体設計は極めて資本集約的なベンチャー事業であるため、小規模な企業にとって、10億米ドルの現金は莫大な金額だ。これは、多くの人々が市場機会として捉えているということを示しているのだろう」と述べている。

 データセンター向けAIハードウェア/ソフトウェアシステム市場は現在、AI専用の処理能力に対する需要の増加を受け、急激な成長を遂げている。

 Liang氏は、「現在世界中で進んでいる“プレAI”から“ポストAI”への移行は、インターネットを超えるほどの重大な影響力を及ぼすだろう。インターネットによって、世界中のさまざまな業界全体の全ての顧客にいかに大きな変化がもたらされたかということを考えると、AIもそれと同等またはそれ以上の規模の変化を起こすのではないだろうか」と述べる。

 同氏は、「ポストAI時代には、あらゆる企業が、生き残りをかけて技術を受け入れる必要がある」と主張する。

 「これは、一部の人々の特定のユースケースだけではなく、全ての人々に必要な技術だ。現在、『AI移行を進めなければ膨大なコストが生じることになる』という段階にまで来ている。企業にとっては、どの競合他社もAIシステムへのビジネス移行を進めているため、何らかの行動を起こさなければ取り残されてしまうという、必要不可欠な選択肢になってきている」(同氏)

 また同氏は、「かつて、インターネットを導入した企業が業界トップの地位を獲得し、今や世界最大規模の企業は、インターネットをベースとしている。AIにも同じことが言えるだろう」と述べる。

 「当社の顧客基盤は、Fortune誌の世界企業番付の上位にランクインするような、あらゆる種類のAI専門知識を有する企業ではなく、“Fortune Everybody”だ。規模の大小に関係なく、AIを必要とする全て人々のことを考えなければならない。われわれは実際に、最先端AIでの稼働とその維持をサポートすることにより、今やあらゆる人々にアクセスを提供できるようになった。」(同氏)

企業の起源

 SambaNovaの起源は、2000年代初頭までさかのぼる。同社の共同創設者である米スタンフォード大学教授Kunle Olukotun氏が当時設立した、データセンター向けマルチコアプロセッサ開発を手掛ける企業Afara Websystemsにおいて、Liang氏とOlukotun氏が出会った頃だ。Afara Websystemsは、旧Sun Microsystemsによって買収された(Sun Microsystemsはその後、Oracleが買収)。Olukotun氏はスタンフォード大学に戻ったが、Liang氏とAfara Websystemsのチームは、Sun MicrosystemsのSPARCプロセッサシリーズの開発を数世代にわたって手掛けたという。

 Olukotun氏はスタンフォード大学に戻ってから、“天才賞”とも呼ばれる「マッカーサー賞(Macarthur Fellowship)」の受賞者である同僚のChris Re教授に出会う。そして二人は、大規模な機械学習を実行するためのより良い方法について考えるようになったという。

 Liang氏は、「われわれは、いくつかの要件が必要だという結論に至った。問題の規模が大きすぎて、人間の心の状態を最適化することができないため、高い抽象化レベルを実現することが可能なソフトウェアスタックが必要だと考えた。データフローアプリケーションを効率的に実行するためのハードウェアシステムが必要だった。その当時、利用可能なデータフロープロセッサ(DFP)は存在していない。機械学習ワークロードは本質的に、迅速に進化するため、時代の流れについていくには、リコンフィギュラブルなシステムが必要だった」と述べる。


SambaNovaの「DataScale」 画像:SambaNova(クリックで拡大)

 その次のステップは、そのような半導体チップを開発するためのチームを探すことだ。Liang氏のチームはOracle/Sun Microsystemsの中で、高性能プロセッサ開発における実績を積み重ね、その目的を達成した。タイミングや技術、開発チームなどもうまく組み合わさって、Liang氏とOlukotun氏、Re氏は、2017年にSambaNovaを共同設立する。

 同社は、データセンターやHPC(High Performance Computing)アプリケーションに向けたシステムレベルのアクセラレーター「DataScale」を携え、2020年12月にひそかに登場した。DataScaleは、同社のリコンフィギュラブルなデータフローユニットチップ「Cardinal SN10」をベースとしており、自然言語処理(NLP)モデルなどの最大規模ネットワークを高精度で実行することが可能だ。SambaNovaは、ラックベースのDataScale製品と併せて、月額料金でハードウェアのレンタルを行っている。同社はこのビジネスモデルを、「Dataflow-as-a-service」と呼ぶ。

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