スパコン「富岳」が3期連続で4冠達成:開発競争は激化へ
富士通は2021年6月29日、同社と理化学研究所(理研)が共同開発したスーパーコンピュータ(スパコン)「富岳」が、世界のスパコン関連ランキングにおいて、「TOP500」「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」「HPL-AI」「Graph500」の全てのベンチマークにおいて第1位を獲得したと発表した。
富士通は2021年6月29日、同社と理化学研究所(理研)が共同開発したスーパーコンピュータ(スパコン)「富岳」が、世界のスパコン関連ランキングにおいて、「TOP500」「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」「HPL-AI」「Graph500」の全てのベンチマークにおいて第1位を獲得したと発表した。2020年6月、同年11月に続き、3期連続での4冠達成となる。
今回の性能は、前回(2020年11月)同様、富岳のフルスペック(432筐体、15万8976ノード)を用いて達成したもので、全ベンチマークにおいて2位と1.7〜5.5倍と大きな差をつけての首位となった。
具体的なベンチマークは以下の通りだ。
- TOP500:LINPACK性能は442.01PFLOPS(ペタフロップス)、実行効率は82.3%(2位は米国の「Summit」で148.6PFLOPS)
- HPCG:16.00PFLOPS(2位はSummitで2.93PFLOPS)
- HPL-AI:2.004EFLOPS(エクサフロップス)(2位はSummitで1.15EFLOPS)
- Graph500:10万2955GTEPS(ギガテップス)/約2.2兆個の頂点と35.2兆個の枝から構成される超大規模グラフに対する幅優先探索問題を調和平均0.34秒で解いた(2位は中国の「Sunway TaihuLight」で2万3756GTEPS)
理研 計算科学研究センターでセンター長を務める松岡聡氏は、同日にオンラインで開催された記者説明会において、「スパコンは“創ってナンボ”、“使ってナンボ”の世界」だと語る。「“創ってナンボ”としては、スパコンは最先端のITをけん引するもの。どの国でもスパコンに投資されているのは、そのような側面があるからだ。“使ってナンボ”では、特に最近は、Society 5.0やSDGsに代表されるさまざまな社会問題への解決にスパコンが力を発揮している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策にも貢献している」(同氏)
幅広い分野に対応できる“アプリケーションファースト”のスパコンとして開発されている富岳にとって、「全てのベンチマークで1位というのは重要」だと松岡氏は強調する。「各ベンチマークはさまざまなアプリケーションの典型例として数値が出てくるので、スパコンの“裾野の広さ”を強調したいのであれば、一部のベンチマークのみでトップ性能を出しても意味がない」(同氏)
松岡氏は、欧米および中国のスパコン開発状況も取り上げた。米国と欧州、中国ではエクサスケールスパコンの開発計画が立てられ、巨額の予算がついている。米国では2023年までに計50億米ドル以上、欧州では2020〜2026年で80億ユーロ以上がつぎ込まれる計画だ。さらに、MicrosoftやAmazon、NVIDIAといった民間企業も次々と大規模なスパコンの構築を発表している。「スパコンの開発は、国家レベルのみならず、民間企業間においても競争になっている」(松岡氏)
一方で、富岳は今回のランキングでもフルスペックを用いての達成となっていて、「理論上の性能はほぼ達成しているレベルでチューニングされている」と松岡氏は述べる。そのため今後は例えば「半導体の微細化に頼らない性能向上の手段も検討する必要がある」と説明した。
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