FinFETの「次の次」に来るトランジスタ技術:福田昭のデバイス通信(308) imecが語る3nm以降のCMOS技術(11)(1/2 ページ)
今回から、「FinFETの「次の次」に来るトランジスタ技術(コンプリメンタリFET)」の講演部分を解説する。
フォークシート構造で平面トランジスタは限界に達する
半導体のデバイス技術とプロセス技術に関する世界最大の国際学会「IEDM(International Electron Devices Meeting)」は、「チュートリアル(Tutorials)」と呼ぶ技術講座を本会議(技術講演会)とは別に、プレイベントとして開催してきた。2020年12月に開催されたIEDM(Covid-19の世界的な流行によってバーチャルイベントとして開催)、通称「IEDM2020」では、合計で6本のチュートリアル講演が実施された。その中で「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials(CMOSを3nm以下に微細化する要素技術-デバイスアーキテクチャと寄生素子、材料)」が非常に興味深かった。講演者は研究開発機関のimecでTechnology Solutions and Enablement担当バイスプレジデントをつとめるMyung‐Hee Na氏である。
そこで本講座の概要を本コラムの第298回から、シリーズでお届けしている。なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
チュートリアル講演「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials(CMOSを3nm以下に微細化する要素技術-デバイスアーキテクチャと寄生素子、材料)」のアウトライン。講演スライド全体から筆者が作成したもの。今回から「FinFETの「次の次」に来るトランジスタ技術(コンプリメンタリFET)」の講演部分を紹介していく(クリックで拡大)
本シリーズの第6回から前回(第10回)までは、2番目のパートである「FinFETの次に来るトランジスタ技術(ナノシートFETとフォークシートFET)」の講演部分を紹介してきた。今回からは、3番目のパートである「FinFETの「次の次」に来るトランジスタ技術(コンプリメンタリFET)」の講演部分をご説明していく。
FinFETの「次の次」とは、ナノシート構造およびフォークシート構造の次という意味だ。ナノシート構造とフォークシート構造は同じ世代(FinFETの次の世代)に属すると位置付けた。ナノシート構造とフォークシート構造は似ているものの、トランジスタ構造としては重要な違いがある。それは、ナノシート構造がトランジスタ単独の構造であるのに対し、フォークシート構造はCMOSロジックを前提にしていることだ。2つのトランジスタを高密度にまとめて製造する構造が、フォークシート構造だとも言える。
imecが考えるトランジスタ技術のロードマップ。FinFETからナノシート(Nanosheet)、フォークシート(Forksheet)と技術世代が交代する。ここで平面(2D)構造のトランジスタが限界に対し、次の世代は積層(3D)構造のCFET(Complementary FET)が候補として考えられている。出典:imec(IEDM2020のチュートリアル講演「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials」の配布資料) (クリックで拡大)
FinFETの「次の次」に来るトランジスタは、フォークシート構造と同様にCMOSロジックを前提とする。フォークシート構造の特長である「PN距離(pチャンネルとnチャンネルのトランジスタを分離するための距離)の短さ」をさらに押し進める。具体的にはpチャンネルのFETの上にnチャンネルのFETを重ねる。シリコン面積はトランジスタ1個分に減り、原理的な密度が上がる。また「PN距離」がさらに短くなることで、理論的にはCMOSロジックの動作速度が向上する。このトランジスタ構造は、「コンプリメンタリFET(C(Complementary)FET)」と呼ばれる。
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