ADASの新たな課題は「センサーのクリーニング」:避けられないコスト増(1/2 ページ)
自動車に、運転支援や自動運転向けに複数の種類のセンサーが搭載されるようになったことで、『予期せぬ事態』が生じている。
自動車に、運転支援や自動運転向けに数の種類のセンサーが搭載されるようになったことで、予期せぬ事態が生じている。それは、自動車メーカーが、これらのセンサーを“きれいな状態”で維持すべく、さらに多くのサブシステムを追加しなければならない方向に向かっているというものだ。
センサーのクリーニング問題
自動車業界は、こうした状況についてよく認識しているが、問題の解決方法を決定した自動車メーカーはほとんどない。センサーが妨害されると、自動運転車に不具合が生じる可能性があるが、人間のドライバーの場合は、単に“ADAS(先進運転支援システム)が使えなくなる不便な問題”にすぎない。最新型の自動車はどれも、「運転支援機能を現在利用できない」ということを示すエラーメッセージを用意している。
さらにADASの場合、単純に複数種類のセンサーを搭載するだけで、短期的に問題への対応が可能になる。米国EE Timesは最近、この件について、Xilinxのオートモーティブビジネスユニット担当シニアディレクターを務めるWillard Tu氏から話を聞いた。記事後半でその内容を紹介する。
近い将来に登場する自動運転の乗用車はほとんどないようだが、それでもいくつかは実用化されるとみられ、また配達車や貨物車両、ドローンなどの他の自動運転システムが増加していることから、すぐにでも問題を解決する必要がある。
どのような解決法を選択したとしても、自動車コストは全体的に増加するだろう。例えば、装備の追加やサブシステムを追加するスペースを空けるための車両設計の変更、処理能力を向上させるといった方法が考えられるが、コストは確実に上昇することになる。
極論の1つとして、センサーを非の打ちどころのない(センシングに影響を与える汚れなどがない)状態に維持するということがある。こうした考え方は、センサークリーニングデバイスを開発した自動車部品メーカーの間で顕著に見られる。またもう1つの極論は、LiDAR/レーダー分野の一部のエンジニアたちの間で広まっている考え方で、部分的に視界が遮られているセンサーの問題について、「最終的には、十分なトレーニング(学習)を実行することでAI(人工知能)が簡単に対応してくれるだろう」と片付けてしまうというものだ。
「十分なトレーニングを実行する」と言うが、ここで、ADASや自動運転技術の試験を行っているメーカーの大半が、米国アリゾナ州やカリフォルニア州などの都市や郊外でテストを行い、実際に路上を走行した距離を記録しているという点について留意する必要がある。「ほとんど毎日が快晴で、センサーの視界を遮る可能性があるものにはめったに遭遇しない」というファンタジーの世界に住んでいると思っているのだろうか。
フロントガラスをきれいに保つには、自動車メーカーが何十年も前から採用してきた洗浄メカニズムが有効だ。スプレーノズルから洗浄液を出し、ワイパーで洗浄液と汚れを落とす。例えば、Waymoでは、センサードームにこの方法を採用している。
しかし、洗浄すべきセンサー(またはセンサークラスタ)の数が増えれば増えるほど、それに合わせてワイパーブレードを追加することは現実的ではなくなる。
ワイパーを使わずに単純な洗浄機構に頼るのも、特に光学カメラの場合、洗浄液のビーズが汚れと同じように邪魔になるという問題がある。自動車部品メーカー(dlhBowles、Kendrionなど)の中には、液体スプレーとエアジェット乾燥を組み合わせた洗浄機構が必要であるという意見もある。
1つの提案は、空気の流れによって自然にほこりや汚れがセンサースイートから遠ざかるように車体を設計することだ。ただ、ここでも、どうしてもセンサーが汚れてしまう場合はある。ではどうすればいいのだろうか? 現在、超音波による洗浄も検討されている。
自動車メーカーは、毎年のように自動車に搭載するセンサーの数を増やしつつも、これらの解決策を検討し続けている。
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