マルチタスク化は、スマホメモリ要件の新たなけん引役:DRAMとNANDの統合も(1/2 ページ)
スマートフォンのメモリ/ストレージ要件は現在も、5G(第5世代移動通信)ネットワークによってけん引されている。しかし、この5Gネットワークだけが、モバイルDRAMやフラッシュメモリに圧力をかけている唯一の要素というわけではない。
スマートフォンのメモリ/ストレージ要件は現在も、5G(第5世代移動通信)ネットワークによってけん引されている。しかし、この5Gネットワークだけが、モバイルDRAMやフラッシュメモリに圧力をかけている唯一の要素というわけではない。
Western Digitalのモバイルセグメントマーケティング部門の責任者を務めるItzik Gilboa氏は、「広い帯域幅と高速化によって、8Kビデオの導入などをはじめ、サイズが非常に大きいファイルに向けた新たな道が開かれた。これにより、ビデオのファイルサイズは約2倍に増大した」と述べている。
8Kビデオは、スマホではすでに急速に普及しており、クラウドへの転送やデバイス上での編集も行われているが、これらはすべてNANDフラッシュの容量と性能を左右するものだ 出典:Western Digital
同社は最近、5Gスマホに向けた第2世代のUFS 3.1ストレージソリューション「iNAND MC EU551」を発表している。ゲームやAR(拡張現実)/VR(仮想現実)の他、バーストモード(Burst Mode)撮影用の超高解像度カメラなど、台頭しているさまざまな用途向けにもサポートを提供していくという。また、この新型ストレージは、Western Digitalが初めてUFS 3.1プラットフォームをベースとして構築されたもので、高速化したNAND型フラッシュメモリやコントローラー、高性能ファームウェアなども採用している。
またGilboa氏は、「既存のスマホは、より大きなファイルの取り込みをはるかに高速で実行できるようになるだろう。iNAND MC EU551は、旧世代品と比べてシーケンシャル書き込み速度を90%高めることが可能なため、5Gのメリットを最大限に活用できるだけでなく、Wi-Fi 6によるダウンロードの速度化も実現可能になる。また、シーケンシャル読み込み速度を30%高めたことで、アプリケーションを短い起動時間で立ち上げたり、アップロードの高速化を実現したりすることもできる。Western Digitalは将来を見据え、Wi-Fi 6を超える新しいWi-Fi規格によってより規模の大きいファイルをメモリやストレージで高速処理できるようにしていきたい」と述べる。
「スマホは現在、PCと同様に、複数のアプリケーションを同時に実行することが求められている。iNAND MC EU551は、ランダム読み出し性能を100%、ランダム書き込み性能を最大40%、それぞれ向上させたことにより、さまざまなワークロード体験をサポートすることが可能だ。さらに、5G対応端末の普及に伴い、スマホは8Kビデオにも対応できるよう、スクリーンサイズが拡大し、解像度も向上し続けている。われわれは現在、5Gが実際に急成長し始めるという転換点にきている。今やほとんどのフラグシップ端末が5G互換性を備えるようになり、それがさまざまなインタフェースの高性能化に対するニーズをけん引する要素となっている」(同氏)
搭載センサー数の増加で進むマルチタスク化
さらに同氏は、「スマホプラットフォームに搭載されるセンサーデバイスの数も増加し続けている。周囲環境を新たな方法で把握できるよう、例えば静電容量センサーや磁気センサー、加速度センサーなどが搭載されている。今まさに、これらのセンサー性能をうまく利用することができるアプリケーションが登場しようとしているところだ。これらはマルチタスク化を促進し、それに伴いレイテンシの要求も高まる」と述べている。
また、スマホで撮影された大容量の動画は、デバイス上で編集される可能性もある。その場合、フラッシュストレージへの書き込み要件が高まり、AI(人工知能)が搭載されることになる。
Gilboa氏は、「携帯電話メーカーはそれぞれの端末を差別化する方法を模索しており、それは単に大容量ストレージをユーザーに宣伝するだけではない。彼らは、ストレージデバイスへのデータの出し入れをシームレスに行うことを求めている」とも語る。また、携帯電話メーカーからは、さまざまな条件下でデータパスを制御し、携帯電話の性能を低下させないような独自の機能を求められることもあるという。「今、私たちはインタフェースの能力を飽和させる段階に来ている」(Gilboa氏)
同社のiNANDは、シーケンシャル書き込み速度を向上させるバッファリング技術である書き込みブースターと、シーケンシャル書き込み速度を90%、ランダム読み出し性能を2倍、ランダム書き込み性能を40%向上させるホストパフォーマンスブースター(HPB)2.0という2つの独自機能を採用している。Gilboa氏は、「これらの機能は、現在の新興用途で必要とされるものをはるかに超えているが、1年半後には普通のものになるだろう」と述べている。
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