マルチタスク化は、スマホメモリ要件の新たなけん引役:DRAMとNANDの統合も(2/2 ページ)
スマートフォンのメモリ/ストレージ要件は現在も、5G(第5世代移動通信)ネットワークによってけん引されている。しかし、この5Gネットワークだけが、モバイルDRAMやフラッシュメモリに圧力をかけている唯一の要素というわけではない。
最新DRAM&NANDを統合するSamsungのアプローチ
iNANDはスマホのストレージのニーズにしか対応しないが、Samsung Electronics(以下、Samsung)は、フラッシュストレージとDRAMメモリの両方を1つのUFSベースのマルチチップパッケージ(uMCP)で提供する。この新しいuMCPのサイズは11.5×13mmで、DRAM容量は6G〜12Gバイト(GB)、ストレージオプションは128G〜512GBとなっており、他の機能のためのスペースを確保している。
![](https://image.itmedia.co.jp/ee/articles/2107/16/jn20210716wd_002.jpg)
Samsung ElectronicsはDRAMとNANDフラッシュを1つのパッケージにまとめ、ユーザーエクスペリエンスを向上させる他の機能のため、デバイスの基板スペースを確保している。 出典:Samsung Electronics
Samsung Semiconductorのコンシューマーメモリ担当シニアプロダクトマーケティングマネジャーであるStephen Lum氏は、「これまでプレミアムフラグシップ端末でしか利用できなかった多くの5Gアプリケーションには、高度な写真撮影、グラフィックを多用するゲーム、ARなど、低消費電力で高速かつ大容量のストレージが必要だ」と述べている。Samsungの新しいUMCは、LPDDR4XベースのUFS 2.2と比較して、DRAMの性能が17Gバイト/秒(GB/s)から25GB/sへと約50%向上し、NANDフラッシュの性能も1.5GB/sから3GB/sへと倍増している。
Lum氏は、「スマホのメモリ要件の多くは5Gによってもたらされるが、プロセッサの進化は常に広帯域化の大きな原動力となってきた。DRAMがシステムのボトルネックになることはない。複数の露出を撮影して合成するHDR写真は、多くのメモリ帯域幅を必要とするアプリケーションの好例であり、高解像度のグラフィックスを使用するゲームも同様だ」と述べている。
ネットワークの高速化に伴い、8Kビデオを含む動画などのコンテンツをクラウドからダウンロードして利用したり、スマートフォンで動画を撮影、編集してクラウドにアップロードしたりする際にも、ストレージ側が対応しなければならない。Lum氏は、「AR/VRアプリケーションでは、仮想空間で良好なユーザー体験を提供するために、LPDDR5が実現する高いリフレッシュレートと、UFS 3.1による帯域幅が必要になる」と続ける。
Lum氏は、「スマホのメモリとストレージの容量はデスクトップPCに匹敵し、コンテンツの量とファイルサイズの両方が増加しているため、この傾向は続くだろう」と述べる。DRAMとNANDフラッシュを組み合わせたパッケージは、限られたボードスペースを考慮しながら、性能と容量を維持することができる。Lum氏は、「スマートフォンメーカーにとって、基板スペースの節約は非常に大きなメリットだ。他のコンポーネントや、より大きなバッテリーを搭載するためのスペースを確保することで、デバイス全体の向上につながる」と語った。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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