Intelの逆襲なるか、ゲルシンガーCEOが描く「逆転のシナリオ」:湯之上隆のナノフォーカス(40)(2/3 ページ)
Pat Gelsinger氏は、Intelの新CEOに就任して以来、次々と手を打っている。本稿では、Gelsinger CEOが就任後のわずか5カ月で、打つべき手を全て打ったこと、後はそれを実行するのみであることを示す。ただし、その前には、GF買収による中国の司法当局の認可が大きな壁になることを指摘する。
TSMCのファウンドリー事業の特徴とは
Yole Développementは、2021年第1四半期に3億5330万台のスマートフォンが出荷されたと推定し、System Plusはそのスマートフォンに搭載されたチップが以下のようになると分析したという(関連記事:「スマホ搭載デバイス分析 〜完全分離されたAppleとHuaweiのエコシステム」)。
- 14nm〜5nmを用いたウエハー数:220万枚
- 28nm〜15nmを用いたウエハー数:180万枚
- 90nm〜32nmを用いたウエハー数:100万枚
要するに、現在のスマートフォンには、最もレガシーな90nmから最先端の5nmまで、幅広い半導体が必要であることが分かる。では、この全ての半導体を供給できるのは、どこか?
Samsung Electronics(以下、Samsung)は5nmの立ち上げに苦戦しているが、たとえそれが立ち上がっても、Samsungには無理だ。Samsungのファウンドリーは基本的に先端に特化しており、90〜32nmは製造できない。28nmも怪しい。
Intelはもっと悲惨だ。Intelは、最先端のCPUの製造に集中している。その最先端も10nmで脱落してしまったわけだが、恐らくIntelが製造できるのは、22〜14nmのCPUとGPUだけだろう。
ところが、TSMCだけは、90〜5nmの全ての半導体を製造できる(図1)。しかも、ロジックだけでなく、アナログ、RF、パワーIC、イメージセンサー、MEMSなども製造しているのである(図2)。
TSMCは、基本的に、建設した半導体工場を永続的に稼働し続けている。その結果、0.25μm以上から最先端の5nmまで、あらゆる種類の半導体の受託生産が可能である。これが、TSMCとSamsungのファウンドリーの大きな違いだ。この2社のファウンドリーは本質的に異なるのである。
そして、Intelがファウンドリー事業を行う場合、製造可能な半導体は、Samsungよりもテクノロジーノードが狭く、種類も少ない。従って、最先端が遅れていることを除外しても、TSMCとは戦いようがない。だから、Intelにはファウンドリー事業は無理だと思ったわけである。
このような状況だから、Reutersが2021年4月12日にIntelが車載半導体の生産を検討していることを報じても、ボリュームゾーンが45〜28nmで、クルマの過酷な条件に耐えなくてはならない車載半導体の製造は、Intelには到底不可能だろうと判断していた。
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