テラヘルツ帯で動作する周波数カウンターを開発:0.1T〜2.8THzの広帯域で精度16桁
情報通信研究機構(NICT)は、半導体超格子ハーモニックミキサーを用いたテラヘルツ周波数カウンターを開発し、0.1T〜2.8THzという4オクターブを超える帯域で精度16桁の計測を実現した。テラヘルツ帯の周波数領域は、「Beyond 5G/6G」での利活用が期待されている。
半導体超格子ハーモニックミキサーを採用、小型で運用コストも低減
情報通信研究機構(NICT)は2021年7月、半導体超格子ハーモニックミキサーを用いたテラヘルツ周波数カウンターを開発し、0.1T〜2.8THzという4オクターブを超える帯域で精度16桁の計測を実現したと発表した。テラヘルツ帯の周波数領域は、5G(第5世代移動通信)の次世代となる「Beyond 5G/6G」において利活用が期待されている。開発成果は、NICTが提供している周波数標準器の較正サービスに活用していく予定である。
テラヘルツ波は1秒間に1011〜1013回も振動する電磁波である。ただ、現行の電子回路技術で振動回数を直接カウントすることは極めて難しく、これまではビート計測法を用いて、計数可能な周波数帯まで下方変換するなどしていた。この時、等間隔で分布させたテラヘルツ基準の集合体である「周波数コム(テラヘルツコム)」を利用しているが、計測に必要な超短パルスレーザー装置の大きさや高い運用コストが課題となっていた。
NICTは今回、超格子構造の半導体ハーモニックミキサーを用いて、テラヘルツ周波数カウンターを開発した。この周波数カウンターは、負性抵抗と呼ばれる非線形効果により、デバイスに入力されたマイクロ波帯の局部発振器信号から、テラヘルツコムを直接発生できるという。これによって、超短パルスレーザーが不要となった。NICTによれば、従来型計測システムに比べ、装置の占有面積は約40分の1に縮小できたという。
開発したテラヘルツ周波数カウンターの測定性能は、2つの評価系を用いて確認した。1つは帯域1THz以下の評価である。安定度が高いテラヘルツ発振器の周波数を、2台のテラヘルツカウンターで同時計測し、これらの周波数差からカウンター本来の測定精度を求めた。もう1つは帯域1THz以上の評価である。テラヘルツコム基準に安定化されたテラヘルツ量子カスケードレーザーの周波数を、独立したカウンターで相対計測した。
2つの評価系を用いることで、0.1T〜2.8THzという4オクターブを超える帯域で高精度に計測できることを確認、周波数カウンターの計測限界は1×10-16以下に到達することを実証した。将来的には動作帯域を3.7THzまで拡張できる可能性があるという。さらに、開発した周波数カウンターは、周波数安定度が高く、短い測定時間内にテラヘルツ周波数の値を精度よく決めることができる。
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