1000円の製品とは“別世界”、ソニーの高級ワイヤレスイヤフォンを分解:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(54)(1/3 ページ)
ソニーが2021年6月に発売したばかりの高級ワイヤレスヘッドフォン「WF-1000XM4」を分解する。そこには、さまざまなショップで販売されている1000円前後のワイヤレスイヤフォンとは、全く違う世界が広がっていた――。
今や“百均”でも見かけるワイヤレスイヤフォン
ソニーは2021年6月25日、ノイズキャンセル機能付きワイヤレスヘッドフォン「WF-1000XM4」を発売した。現在ワイヤレスヘッドフォンは多数販売されている。大型家電量販店やホームセンター、ドラッグストア、100円均一ショップなどでも売られるほどに日常化している。安価なものは1000円を切る(サンドラッグでは998円:本体価格)。ワイヤレスイヤフォンは1000円の時代が来ているわけだ。
一方でソニーやApple、BOSE、ヤマハなどは数万円のいわゆる高級機のワイヤレスイヤフォンを販売する。高級機は価格に見合う高い音質を備え、ワイヤレス性能も格段に高い。ソニーはオーバーヘッド型、イヤフォン型など多数のワイヤレスオーディオを発売しており、ノイズキャンセルにも定評がある。最新のWF-1000XM4は、前機種の「WF-1000XM3」に比べて二回りほど小型化されており、さらにソニー独自のオーディオプロセッサ「V1」が採用されている。
図1は、WF-1000XM4の梱包箱、イヤフォン(片側:左右対称)、内部取り出し、電池の様子である。電池は香港のZeniPowerのものが使われている。前機種も同じくZeniPowerの電池が使われていたが、新機種では電池容量がおおよそ2割ほど大きくなっている。小型化されているにもかかわらず電池の容量が増加していることから、WF-1000XM4の大幅な設計見直しが読み取れる。
図1の右のように、内部は2つの基板(フレキシブル配線含む)とドライバーによって構成されている。ドライバー側の基板には、MEMSモーションセンサーとドライバーの音をキャッチしてバック処理を行うためのMEMSマイクロフォンが1個設置されている。もう一方の基板には、Bluetoothやオーディオ処理を行うV1プロセッサや、外部の音声をキャッチするフォワード処理用のMEMSマイクロフォンが2個設置されている。その他、バッテリー充電用ICやフラッシュメモリなども搭載されている。
図2はドライバーの分解の様子である。ドライバーは直径6mm。1000円のワイヤレスイヤフォンとは全くの別物だ。頑強な金属で覆われており、さらにその外側も、図2左上のようにドライバー全体が強固なプラスチックで固定されている。ドライバー部を2重3重に保護しているわけだ。1000円のワイヤレスイヤフォンは筐体だけでドライバーを覆っており、取り出しは1工程で済むが、WF-1000XM4ではプラスチップから取り出し、金属フレームを取り外して、ようやくドライバーにたどり着く。密閉ドーム型のしっかりした作りである。ドライバーの内部はネオジム磁石が使われており、コイルを円形に取り囲んでいる。
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